日本心臓血管外科学会雑誌
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左肺動脈後方の垂直静脈を有する新生児Ia型総肺静脈還流異常症の2手術治験例
前田 正信村瀬 允也村上 文彦寺西 克仁
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1992 年 21 巻 5 号 p. 506-509

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抄録

総肺静脈還流異常症 (TAPVC) のなかでIa型は最も頻度が多く, 比較的新生児期の肺静脈閉塞症状が少ないといわれている. 通常肺静脈の走行がIa型では垂直静脈が左肺動脈の前方を通って上行し無名静脈に還流するのが一般的とされているが, 今回左肺動脈と左気管支との間に垂直静脈が挟まれて, 新生児期に強い肺静脈閉塞症状をきたした症例を2例経験した. 症例は生後12日 (症例1) と8日 (症例2) で, いずれも心断層エコーにて診断し, 緊急手術を行って救命しえたが, 術前肺うっ血がより強かった症例1は症例2に比し, 術後の肺機能の改善の遅れと軽度の肺高血圧の残存が認められた. 本症は左気管支と左肺動脈の間に垂直静脈が挟まれることによって肺静脈閉塞が起こり, これが肺高血圧に拍車をかけ肺静脈狭窄を強くさせるという悪循環を形成することになる. このようなTAPVCに対しては術後回復の点からも肺うっ血の進行する前のより早期の手術が重要であると考えられる.

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