日本心臓血管外科学会雑誌
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心房中隔欠損症と漏斗胸の一期的手術治験例
平松 祐司厚美 直孝島田 知則三井 利夫堀 原一茅野 公明
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1992 年 21 巻 5 号 p. 501-505

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抄録

症例は6歳, 男児, Down 症候群. 心房中隔欠損症と高度の漏斗胸を合併していた. この症例に対して胸部正中皮膚切開によるアプローチで心房中隔欠損閉鎖術と胸肋挙上術を一期的に行い, 良好な結果を得た. 心疾患と漏斗胸の一期的手術は二期的手術に比べ, 1) 漏斗胸残存による心肺への悪影響が除かれる, 2) 一度の侵襲で済み, 二期的手術のように癒着の影響がない, 3) 精神的負担を残さない, 4) 通常の胸骨切開よりも良好な心内修復のための視野が得られる, という利点がある. 一方, 侵襲の拡大, 出血量の増加, 血流の途絶した胸肋複合体への感染など不利な要素も見逃せないが, 近年の術中術後管理の進歩により, これらの欠点は克服されつつある. 心疾患と漏斗胸の一期的手術は, 出血と感染に対する十分な配慮があれば, 比較的安全に行いうる有効な方法であると考えられた.

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