日本心臓血管外科学会雑誌
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心筋梗塞にて発症し多発性脳梗塞を合併した両心房内粘液腫の一治験例
平田 展章酒井 敬榊 成彦伊藤 浩中埜 粛松田 暉
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1992 年 21 巻 5 号 p. 519-523

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抄録

心筋梗塞で発症し, 多発性脳梗塞を合併したきわめて希な両心房粘液腫の一例を経験したので報告する. 症例は26歳の男性. 胸痛を主訴として来院した. 心筋梗塞を疑い, 冠動脈造影を施行し, 右冠動脈後下行枝に完全閉塞を認めた. 経過観察中, 多発性脳梗塞を発症し脳血管造影施行. 多発性脳動脈瘤を認めた. 心筋梗塞の経過観察にて施行した心エコー検査にて, 左房内に梗塞発症時には指摘しえなかった径約3cmの腫瘍を認め, 急速発育型の粘液腫を疑った.これが多発性塞栓症の原因であると考え, 開心術による腫瘍摘出術を施行した. 麻酔挿管下に経食道心エコー法を施行したところ, 左房内には後壁に付着する腫瘤をまた右房内にも腫瘤を認めた. このため左房切開のみでなく右房切開も施行した. 左房内腫瘍は左房後壁に付着しており (径5×4×3cm), 右房内腫瘍は心房中隔に付着していた (径1×1×1cm). ともに粘液腫の診断を得た. 術後の経過は良好であるが, 当科および近医脳神経科にて厳重に経過観察中である.

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