日本心臓血管外科学会雑誌
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大量下血で発症した孤立性腸骨動脈瘤の1経験例
中山 義博真方 紳一郎岡崎 幸生夏秋 正文伊藤 翼
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1993 年 22 巻 1 号 p. 65-67

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抄録

動脈瘤-腸瘻は動脈瘤の合併症の1つであり, 頻度こそ少ないがひとたび発症した場合は致死的な疾患である. 今回われわれは孤立性腸骨動脈瘤-S状結腸瘻の1例を経験した. 症例は68歳男性, 下血を主訴に近医を受診し注腸造影にてS状結腸憩室の診断を受けS状結腸切除術を受けた. その後も大量下血が生じショック状態となるため当科に緊急入院となった. 本院での血管造影所見にて左総腸骨動脈瘤破裂像が得られS状結腸瘻と診断, 緊急手術を施行した. 手術は瘤切除と extraanatomical bypass として大腿-大腿動脈バイパスを造設した. 本症例は敗血症より多臓器不全となり術後8日目に失った. 本病態の最大の問題点は致死率が高い疾患にもかかわらず確定診断が非常に困難であるという点である. この場合最も大切なことは, 出血点不明な消化管出血症例を診察する上で動脈瘤-腸瘻の可能性を常に考えておくことと思われた.

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