抄録
1987年から1992年までの5年間に広島大学第1外科でバイパス術を施行した閉塞性動脈硬化症症例を, 腹部大動脈, 腸骨動脈領域に病変を有するAIOD群51病変と大腿動脈, 膝窩動脈領域に病変を有するFPOD群46病変に分け, 両者の比較を行った. 年齢, 性別, 症状の軽重, 喫煙歴, コレステロール値, 中性脂肪値, 腎機能等の背景因子には有意差は認められなかったが, 末梢側病変の合併率はAIOD群24%, FPOD群57%でFPOD群のほうが高率であった. バイパス術後の5年累積開存率はAIOD群100%, FPOD群61%でAIOD群のほうが良好であった. AIOD群では末梢側病変の合併率の低さに加え, 全例末梢側病変の同時再建術が行われており, 末梢の run off の状態が手術成績に大きく関与するものと考えられた.