抄録
腹部大動脈瘤・結腸癌合併例において, 腹部大動脈瘤の径が7cm, 結腸癌が進行癌で遠隔転移なしという状態であったため一期的に腹部大動脈人工血管置換術・結腸部分切除術を施行した. 結腸部分切除術においては腹腔内での腸管吻合は行わず一時的人工肛門造設を行い, 術野の汚染は最小限度にすることができた. また, 重症冠動脈三枝疾患を合併しており, 術中・術後心臓手術に準ずる管理を行い, 心筋梗塞などの発生を認めなかった. 今後, 腹部大動脈瘤症例において悪性腫瘍および虚血性心疾患を合併する症例は増加するものと考えられ, 術式・周術期管理に工夫, 細心の注意を要するものと思われた.