1994 年 23 巻 2 号 p. 97-100
胸腹部大動脈瘤18例の手術成績を報告した. 原疾患は動脈硬化 (56%) についで高安動脈炎, Behçet 病などの炎症性動脈瘤 (39%) が多く, 手術術式は Crawford 法13例, パッチ閉鎖3例, Hardy 法とextra-anatomic bypass 法が各1例で行われた. 補助手段は一時的バイパス法8例, 部分体外循環法7例で, 腹部主要分技は選択的に灌流した. 破裂例は全体の39% (7例) を占め, 炎症性動脈瘤では86%が破裂していた. 早期死亡率は非破裂例11例中0, 破裂例7例中3例, 42.9%, 全体18例中3例, 16.7%であった. 術後の重篤な合併症は対麻痺, 非閉塞性腸管虚血, 空置瘤の破裂が1例みられ3例とも在院死亡した (在院18例中6例死亡, 死亡率33.3%). 動脈硬化による胸腹部大動脈瘤手術例の follow up 期間中の死亡はなく成績は良好であった. 一方, Behçet 病では2例とも遠隔期に吻合部破裂をきたし再手術を行い, うち1例が死亡した.また, Marfan 症候群の1例も遠隔死亡した. F-Fバイパスによる部分体外循環法, Crawford 法による再建を行うことが胸腹部大動脈瘤に対するわれわれの基本方針である.