抄録
内腸骨動脈の虚血により生ずる臀筋跛行に対し, 種々の下肢血行再建術を施行し良好な結果を得ているので, 本症の病態と治療について考察する. 症例は当科で経験した5例で, いずれも足関節圧比の低下が著明でないにもかかわらず, 歩行時に激しい臀部痛を生じていた. 動脈造影上は内腸骨動脈狭窄の他に骨盤部動脈の広範囲な病変が認められ, また疼痛部位の対側の下肢動脈病変が主体である症例も存在した. 手術は主幹動脈病変の再建を優先し下肢血行の回復を計り, 可能なものは内腸骨動脈再建を加えた. その結果, 全例で疼痛は消失した. 本症の発症には骨盤領域と下肢の動脈病変の合併, 側副血行の形成形態が複雑に関係しており, 運動時の下肢への血流 steal が主因をなしていると思われた. このような病変多発例で steal の関与している場合には, 下肢血行再建術が有効であると考えられる.