抄録
最近では, juxtarenal aortic occlusion (JAO) に対する手術成績が向上し, 比較的安全に anatomical bypass (ANA) が施行できるようになってきた. しかし, JAOには注意を要すべき病態があり, その適用に慎重でなければならない. 1984年より1993年までの10年間に経験したJAOに対する手術症例17例を対象とした. 主訴は, 間歇性跛行が多く, 12例 (70.6%) に認められた. 急性増悪例を2例 (11.8%) に認めた. 手術方法は, 原則として anatomical bypass (ANA) 15例 (88.2%) を施行したが, 腹部大動脈石灰化の高度な2例 (11.8%) に対しては, extra-anatomical bypass (EXT) を行った. 入院死亡は, 急性増悪例2例と全身状態不良例1例の3例であり, いずれもANAを行った症例であった. 早期合併症は, 急性腎不全1例, 亜イレウス2例であった. 遠隔期合併症は, 心筋梗塞2例, 脳梗塞1例, 末梢側吻合部動脈瘤2例であった. 全身状態不良例, 急性増悪例, 大動脈高度石灰化例では, extra-anatomical bypass を選択すべきである.