1996 年 25 巻 2 号 p. 90-94
当科で経験した臓器虚血を伴う解離性大動脈瘤手術症例6例について検討した. 年齢は52~73歳, 平均62歳で, DeBakey I型4例, DeBakey III b型2例 (男女各3例) であった. 虚血臓器は, 脳+上肢1例, 腸管+腎1例, 腎のみ1例, 腎+下肢1例, 下肢2例であった. 手術は, DeBakey I型の4例には上行または上行・弓部大動脈置換術を (うち1例でY-グラフト置換術を追加), DeBakey III b型の2例にはバイパス術とY-グラフト置換術を行った. 下肢虚血の3例のうち2例でMNMS (myonephropathic metabolic syndrome) を生じた. 結果は6例中3例が死亡と不良であった. 臓器虚血を伴う解離性大動脈瘤に対しては, 術前の正確な診断 (分枝の起始状況の把握) と適切な治療方針が重要と思われた.