日本心臓血管外科学会雑誌
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腹部大動脈瘤の自然経過と手術適応
檜原 淳古山 正人竹尾 貞徳池尻 公二
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1996 年 25 巻 2 号 p. 95-98

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抄録
当科において過去6年6か月間に経験した腹部大動脈瘤症例のうち, 経過観察期間を有する33症例について動脈瘤最大径の経時的変化を調査し, 延べ69回の経過観察期間ごとに動脈瘤径拡大速度を算出した. その結果, 瘤径5cmを境にして瘤径拡大速度は平均0.41cm/年から1.38cm/年へと約3倍に増加していた. 嚢状型動脈瘤は紡錘型動脈瘤に比べて小さい瘤径でも拡大傾向が強く, 瘤径4cmを境にして拡大速度が4倍以上に増加していた. 高血圧合併例は非合併例より拡大速度が遅く, 年齢による瘤径拡大速度の差は認められなかった. 緊急手術が必要とされる破裂性腹部大動脈瘤症例はいまだに手術死亡率が高く, 治療成績を向上させるためには破裂前に手術を施行することが必要である. したがって厳重な経過観察の上で, 瘤破裂の危険性が急速に増大する前, すなわち紡錘型では瘤径5cm以上, 嚢状型では4cm以上を手術適応とし, これに症例ごとのリスクを考慮に入れて手術時期を決定するのが望ましいと思われる.
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