抄録
腹部大動脈瘤 (AAA) には, 高率に冠動脈疾患を合併する. AAA待機手術症例に対しては原則として術前冠動脈造影を施行し, 適応症例にはPTCAを第一選択として冠血行再建をAAA手術に先行させて行ってきた. 1987年3月から1995年2月まで当センターで待機的手術治療を旋行した40例中冠動脈疾患合併症例は21例, 58%であった. 21例中冠血行再建の適応と考えられた症例は9例であった. 腹部大動脈蛇行のためPTCA困難と判断しAAA手術を先行させた後PTCAを施行した症例を1例, 多枝病変のため当時のPTCA適応からはずれCABGを先行手術として施行した症例を1例を認めるが, その他7例はPTCAにより冠血行再建後AAA手術を施行した. 死亡症例は認めず, 術後心筋梗塞等の心合併症もなかった. AAA手術に際し, 冠血行再建の適応症例にはPTCAを第一選択としてAAA手術に先行して治療を行う方針で良好な結果が得られた.