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山名 一有, 明石 英俊, 比嘉 義揮, 田山 慶一郎, 甲斐 英三, 花元 裕治, 江頭 有朋, 小須賀 健一, 青柳 成明
1997 年26 巻1 号 p.
1-5
発行日: 1997/01/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
真性胸腹部大動脈瘤手術症例27例における補助手段や合併症の検討を行った. 一時的 Axillo-Femoral バイパス使用例では10mm PTFEに8mmの枝をつけ, また, 部分体外循環例では1分枝につき5ml/kg/minで腹部主要分枝の灌流を行ったが, いずれも臓器虚血はなく出血量の有意差はなかった. 腹部主要分枝再健に関しては, DeBakey 法, Crawford 法ともに有用な再建法であった.肋間動脈再建に関しては, 再建例12例中4例 (33.3%) に対麻痺の発生をみた. しかし, cerebrospinal fluid drainage 症例には対麻痺はなく, 4例中1例の不全麻痺症例はこれを使用しており麻痺は後に改善した. なお, 転帰は早期死亡1例 (3.7%), 病院死亡2例 (7.4%), 遠隔死亡1例(3.7%) であった.
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吉田 勝彦, 大島 英揮, 村上 文彦, 冨田 康裕, 松浦 昭雄, 日比 道昭, 川村 光生
1997 年26 巻1 号 p.
6-10
発行日: 1997/01/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
僧帽弁置換術および左房粘液腫摘出術に対し, combined superior transseptal approach (CSTA) を用いた. 僧帽弁置換術の単独初回手術は21例あり, 僧帽弁への到達法はCSTA9例, 経左房3例, 経中隔9例であった. この3者間で, 手術時間, 体外循環時間, 大動脈遮断時間, 術後24時間ドレーン排液量, 輸血量に差を認めなかった. 僧帽弁置換術と三尖弁輸縫縮術を施行した再手術例4例においても, CSTA (2例) と経中隔 (2例) で, 手術時間, 体外循環時間, 大動脈遮断時間に差を認めなかった. 術前洞調律例13例の術後心房性不整脈発現は, CSTA6例, CSTA以外7例 (経左房3例, 経中隔4例) の間に差を認めなかった. 術後抗不整脈剤の投与も両者間に差を認めなかった. CSTAは僧帽弁手術, 左房粘液腫手術に際して, 良好な視野が得られる有意義な切開法であると考える. 本法の適応は, 三尖弁疾患合併例, 狭小左房例, 再手術例, 左房粘液腫例などで, 経中隔法のみでは十分な視野が得られない場合と考える.
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虚血性心疾患との比較
大木 聡, 熊倉 久夫, 丹下 正一, 市川 秀一, 大山 良雄, 石川 進, 森下 靖雄
1997 年26 巻1 号 p.
11-15
発行日: 1997/01/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
閉塞性動脈硬化症 (ASO) の発生に関与する要因を明らかにするために, ASO163例 (男性137例, 女性26例) を対象に動脈硬化の危険因子を検討し, 虚血性心疾患 (IHD) 54例 (男性45例, 女性9例) の結果と比較した. ASOでは男女比が約5対1と男性が圧倒的に多かった. また, IHDと比べると,より高齢で, 高血圧, 脳血管疾患を合併するもの, 喫煙者が有意に多かった. ASOのうち合併症を有さないものでは, 有するものに比べて, remnant-like particles cholesterol (RLP-C) がより高い傾向にあった. また, lipoprotein-(a) (Lp(a)) はIHDよりASOで高い傾向にあった. ASOの危険因子として, 男性, 加齢, 喫煙, 高血圧, 脳血管疾患が重要であり, IHDよりもこれらの危険因子は重要である. 一方, 血清脂質異常もASOの発生, 進展に関与する可能性はあるが, その意義は今回の結果を考えるとき, IHDにおけるほど重要でない.
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櫻井 一, 村瀬 允也, 前田 正信, 玉木 修治, 西沢 孝夫, 村山 弘臣
1997 年26 巻1 号 p.
16-21
発行日: 1997/01/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
当院で最近約7年半に腹部大動脈瘤に対し48例に外科治療を行い, うち13例 (27.1%) が破裂例であった. さらにこのなかで6例に対し左開胸を併用したが, この利点と欠点につき検討した. その結果, 左開胸併用法では短時間で胸部大動脈遮断が可能で早期に脳や冠血流の循環動態を改善しえること, 開腹から腹部大動脈遮断までの間の急激な大量出血にも迅速に対応できること, 開腹既往例の癒着も関係ないことが利点と考えられた. 一方問題点として, 遮断時間が限られること, 胸膜癒着例では遮断までに時間を要すること, 呼吸不全合併例が増加する可能性があること, 出血量が増加する可能性があること, 胸部大動脈石灰化や瘤合併例では解離性大動脈瘤, 瘤破裂などを新たに起こしうることなどがあげられた. 今後は, 本法の長短所を理解し, 左開胸併用法とともにバルーンカテーテル法も症例により選択していく必要があると考えられた.
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安田 治正, 平石 泰三, 小林 亨
1997 年26 巻1 号 p.
22-26
発行日: 1997/01/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
腹部大動脈瘤 (AAA) には, 高率に冠動脈疾患を合併する. AAA待機手術症例に対しては原則として術前冠動脈造影を施行し, 適応症例にはPTCAを第一選択として冠血行再建をAAA手術に先行させて行ってきた. 1987年3月から1995年2月まで当センターで待機的手術治療を旋行した40例中冠動脈疾患合併症例は21例, 58%であった. 21例中冠血行再建の適応と考えられた症例は9例であった. 腹部大動脈蛇行のためPTCA困難と判断しAAA手術を先行させた後PTCAを施行した症例を1例, 多枝病変のため当時のPTCA適応からはずれCABGを先行手術として施行した症例を1例を認めるが, その他7例はPTCAにより冠血行再建後AAA手術を施行した. 死亡症例は認めず, 術後心筋梗塞等の心合併症もなかった. AAA手術に際し, 冠血行再建の適応症例にはPTCAを第一選択としてAAA手術に先行して治療を行う方針で良好な結果が得られた.
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佐藤 了, 磯村 正, 林田 信彦, 東 隆也, 赤須 郁太郎, 有永 康一, 丸山 寛, 青柳 成明, 小須賀 健一, 久冨 光一
1997 年26 巻1 号 p.
27-33
発行日: 1997/01/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
Warm blood cardioplegia の順行性間歇的投与 (IWBC) による冠状動脈バイパス手術 (CABG) を施行後左室造影を行いえた49例を対象として術後心機能, 左室壁運動の変化, 術後運動量の改善を検討した. 平均大動脈遮断 (ACC) 時間は68.2±22.8分, WBC投与時間は12.6±6.9分でACCの18.2±7.1%であったが, ACC解除後の自然心拍動再開率は92%であった. 周術期心筋梗塞を発生したものは1例で, 術後よりドーパミン5μg/kg/min以上必要としたものは1例であった. 心係数は術後平均3.2
l/min/m
2まで上昇した. LVGによる壁運動は術前に比し有意に改善し, 術後早期の壁運動の低下はみられなかった. 術後運動量は術後平均6.6 METSにまで改善し虚血所見を呈したものはなかった. 以上よりIWBCは手術操作が容易に行える心筋保護法で, 術後心機能, 壁運動に障害なく, 安全にCABGが施行できる方法と考えられた.
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佐藤 了, 小須賀 健一, 林田 信彦, 熊手 宗隆, 磯村 正, 青柳 成明, 久冨 光一
1997 年26 巻1 号 p.
34-39
発行日: 1997/01/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
1980年6月から1995年6月までの16年間に当科で手術を行った1歳未満の大動脈縮窄症 (CoA) 37例につき検討した. 大動脈再建は27例に Subclavian flap (SCF) 法, 7例に直接吻合 (DA) 法を用い, 他にグラフトを用いた大動脈再建, SCF法+パッチ拡大術をおのおの1例, 2例に行った. 経過観察期間は6か月~13年 (平均7.4±5.3年) で再狭窄をSCF法で10% (2/20例) に認めたが経皮的バルーン拡張術 (BP) でSCF法1例を狭窄解除した. CoA複合例の手術死亡率 (病院死亡を含む) はVSD単独合併例では一期的根治例25% (1/4例), 二期的根治例16.6% (3/18例) であったが, 最近の3例は一期的根治術を行い全例生存した. 複雑心奇形合併例では60% (6/10例) が手術死亡した. 以上よりわれわれはCoA複合例に対してはVSD単独合併例では同時期手術, 複雑心奇形合併例では二期的に施行するのが安全であると考えている.
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伊藤 健造, 北川 哲也, 北市 隆, 福田 靖, 筑後 文雄, 川人 智久, 田埜 和利, 堀 隆樹, 吉栖 正典, 加藤 逸夫
1997 年26 巻1 号 p.
40-45
発行日: 1997/01/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
治療に難渋した人工血管感染5症例について検討した. 年齢は57~81歳, 初回手術時の基礎疾患は Leriche 症候群1例を含む閉塞性動脈硬化症3例, 悪性腫瘍の動脈浸潤2例であった. 人工血管感染部位は鼠蹊部3例, 膝上部1例, 腹部1例で, うち4例の起炎菌は
Staph. aureus (MRSA3例) であった. 感染原因となった人工血管の手術から感染発現までの期間は, 腹膜炎症例は10日と短く, 末梢側の感染では2か月~14年と長かった. 腹膜炎例を除いた症例での感染巣のドレナージ, 洗浄等の保存的治療期間は40~64 (平均50) 日であった. 手術はグラフトの感染部位のみの除去またはグラフト全部を摘出し, 新たな血行再建術を施行した. 感染グラフトはPTFE4例, Woven-Dacron 1例で, 再手術にも同様のグラフトを用いた. 感染部を避けるため, 閉鎖孔経由など3例で別経路を用いた. 感染人工血管の全摘出が困難な症例では, 感染巣部のみの人工血管摘除と健常な周囲組織での再建術を行い良好な結果を得た. 手術成績は全例生存, 敗血症や下肢切断等の重篤な合併症は認めなかった. 再手術から現在までの8か月~8年間, 全例開存し再感染も認めていない.
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遠隔成績を含めて
明石 英俊, 田山 慶一郎, 福永 周司, 甲斐 英三, 花元 裕治, 比嘉 義輝, 岡崎 悌之, 山名 一有, 小須賀 健一, 青柳 成明
1997 年26 巻1 号 p.
46-50
発行日: 1997/01/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
1961年から1994年までに治療を行ったB型大動脈解離症例121例について急性期症例と慢性期症例, 内科治療群と外科治療群に分け, 早期成績と遠隔期成績について検討した. 急性期症例については早期血栓閉塞型と解離腔開存型に分け, 遠隔成績を検討した. 急性期症例の内科治療群の5年生存率は早期血栓閉塞型で94.4%と良好であったが, 解離腔開存型では63.7%まで低下した. 発症から2年間の生存率の低下が著明であった. 慢性期手術症例の13.3%を術後早期に失ったが, これらを含めた5年生存率は64.4%で解離腔開存型の内科治療成績とほぼ同等であった. B型大動脈解離に対しては, 早期血栓閉塞型は内科治療を, 解離腔開存型は亜急性期あるいは慢性期早期の外科治療が予後を改善すると考えられた.
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吉田 昌弘, 鴻巣 寛, 久保 速三, 吉井 一博, 志馬 伸朗, 白方 秀二
1997 年26 巻1 号 p.
51-54
発行日: 1997/01/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
破裂性腹部大動脈瘤は, 非破裂性に比べて未だ救命率が低い. われわれは最高齢者に属する破裂性腹部大動脈瘤の緊急手術を経験し, 救命しえた. 症例は90歳女性. 近医より腰腹部痛および拍動性腫瘤のため腹部大動脈瘤切迫破裂の診断にて本院紹介入院となった. 入院後ショック状態となり腹部大動脈瘤破裂と診断し緊急手術を行った. 開腹時, 後腹膜腔に血腫の拡がりが見られ Fitzgerald 分類III型であった. 手術は胃小網を切開し, まず横隔膜下にて大動脈を遮断し出血をコントロールした後, 腎下部大動脈に遮断を変更した. 瘤後壁に5×1.5cmの破裂口を認めた. 16×8mm Y-graft を用いた人工血管置換術を行った. 手術時間は5時間5分, 術中出血量は6200mlであった. 術後腸管虚血症状もなく約1か月して退院した. 高齢者であっても迅速な判断と綿密な術後管理によって救命することができる.
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青山 貴彦, 塩井 健介, 間瀬 武則, 野垣 英逸, 永田 昌久
1997 年26 巻1 号 p.
55-58
発行日: 1997/01/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
乳幼児期の活動期感染性心内膜炎は比較的少ない. 今回われわれは心室中隔欠損症 (VSD) に合併した, 肺動脈内に巨大疣贅を有し内科的治療が困難であった. 幼児の感染性心内膜炎の手術例を経験したので報告する. 症例は2歳5か月児, 膜様部型のVSDおよび軽度肺動脈狭窄症と診断され経過観察されていた. 2週間高熱が続いたため, 心エコー検査を施行したところ, 肺動脈内に巨大疣贅を認めた. 内科的治療にて改善がみられず, 緊急手術を施行した. 手術は感染し破壊された肺動脈弁を切除掻爬し, 右肺動脈に達していた疣贅を可及的に除去した後, VSDパッチ閉鎖を行った. 術後経過はほぼ良好であった. 乳幼児の右心系の活動期感染性心内膜炎では肺塞栓による死亡例も報告されており, 内科治療に抵抗を示すものは早期の手術が必要であると思われた.
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宮崎 慶子, 明神 一宏, 俣野 順, 村上 達哉, 国原 孝, 岡 潤一
1997 年26 巻1 号 p.
59-61
発行日: 1997/01/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
外傷が契機となって発生した総腸骨動脈瘤の慢性破裂を経験した. 症例は66歳男性. 4か月前, 自転車より転落した. 1か月前, 入浴中に左下腹部の腫瘤を自覚し近医受診した. CTにて総腸骨動脈瘤を指摘され, 当科を紹介された. 精査により転倒・打撲による総腸骨動脈瘤の慢性破裂と診断され手術を行った. 動脈瘤は左総腸骨動脈瘤主体で右総腸骨動脈と腎動脈直下の腹部大動脈に及んでいた. 左総腸骨動脈に破裂孔を認め, 周囲に巨大血腫を形成していた. 瘤を切除後 Y-graft にて置換した. 患者は経過順調にて術後約2か月で退院した.
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林 載鳳, 佐々木 秀, 川本 純
1997 年26 巻1 号 p.
62-64
発行日: 1997/01/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
65歳の女性が心不全症状にて受診. 心エコー検査にて左房内腫瘍を指摘され, 摘出術を行った. 腫瘍は7×5×4cm, 70gの巨大なもので, 組織学的には粘液腫であった. 手術は両心房切開法にて行った. この方法は右側左房切開法や経右房経心房中隔切開法に比べて種々の利点を持つが, 今回のように腫瘍サイズが巨大な場合には, 左房からの腫瘍付着部の指示が確実にできない可能性がある. 腫瘍摘出後の僧帽弁の評価には術中の経食道心エコー検査が有用であった.
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柳谷 信之, 藤井 尚文, 西村 和典
1997 年26 巻1 号 p.
65-68
発行日: 1997/01/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
44歳女性で偽性大動脈縮窄症に合併した胸部大動脈瘤に対して人工血管置換術を施行した. 瘤は縮窄部位の近似側に最大径38mmの紡錘状と最大径53mmの嚢状瘤があり, 縮窄部位にも径12mmの嚢状瘤があった. 瘤壁は全体に極めて菲薄であり, 粥状硬化は認められなかった. 大動脈縮窄部位の近似側に発生した胸部大動脈瘤の報告は非常に少なく, 今回症例報告する.
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香山 茂平, 石原 浩, 大野 祥生, 中尾 達也, 小倉 良夫
1997 年26 巻1 号 p.
69-72
発行日: 1997/01/15
公開日: 2009/04/28
ジャーナル
フリー
症例は70歳男性. 動悸を主訴に来院し, 胸部X-p, 心エコーで心嚢水貯留認めた. 画像診断により, 心嚢内に25mm径の腫瘤を認めた. 心嚢穿刺では淡血性の心嚢水を得, 心膜腫瘍を疑い手術を施行した. 腫瘍は心嚢膜に接するように発育しており, 連続的な拡大や, 播種を認めなかった. 腫瘍を心嚢膜と一塊に切除しえた. 病理学的に悪性中皮腫と診断するのが妥当であると考えられた. 悪性心膜中皮腫は瀰慢性に発育することが多く, 大半は外科的切除が不可能であるが, 本症例のように限局性に発育する場合もあり, その場合早期診断はもちろん, 完全切除も可能である.
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