1997 年 26 巻 5 号 p. 338-341
61歳の男性で二尖弁による大動脈弁閉鎖不全に急性A型大動脈解離をきたしSJM25A弁による大動脈弁置換と上行大動脈置換術を施行した. エントリーは上行大動脈中央部前壁に認めた. 弁輪より約3cm高位側と腕頭動脈直下で上行大動脈を離断切除し偽腔をGRF糊で補強閉鎖し人工血管との直接吻合を行った. 術後2か月目に大動脈基部の再解離から吻合部破綻をきたし, 再度緊急手術を行った. 人工弁機能は正常で, 同弁を温存した Cabrol 法による冠状動脈再建術を施行し, 同時に剥離操作中に損傷した遺残解離腔を伴い拡大した弓部大動脈を全置換し救命した. 本症例での手術を中心に検討した.