日本心臓血管外科学会雑誌
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26 巻, 5 号
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  • 中西 浩之, 大庭 治, 七条 健, 中井 幹三, 首藤 毅, 木村 圭吾
    1997 年 26 巻 5 号 p. 279-284
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1991年1月より5年間に10例のCABGと動脈硬化性閉塞病変の同時手術を施行した (AAA合併例は除く). 手術時年齢は平均65.8歳で, 冠動脈グラフト本数は平均2.2本で, 動脈硬化性病変の術式は内頸動脈のTEA2例, 大動脈-鎖骨下動脈バイパス2例, 大動脈-両側総腸骨動脈バイパス1例, 総腸骨動脈 interposition 1例, 大動脈-外腸骨動脈バイパス1例, F-Pバイパス3例 (4本), F-Tバイパス1例であり, 手術時間は平均428分, 体外循環時間は平均121分, 大動脈遮断時間は平均61分であった. 無輸血は4例であった. 手術死亡はPMI合併後緊急IABP挿入肢のMNMSの1例であった. 同時期に施行した待期的CABG単独施行183例と比較検討した. 手術時間, 出血量は同時手術例で多かったが, 手術死亡率, 無輸血率, 挿管日数, 術後入院日数は有意差を認めず, 手術は安全に行われた.
  • 夏秋 正文, 伊藤 翼, 乗田 浩明, 内藤 光三, 須田 久雄
    1997 年 26 巻 5 号 p. 285-292
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患低左心機能例において術前の左室駆出率 (EF) や左室容積が術後心機能にどのように影響がみられるか, RI心プールシンチ上EF31~39%の42例 (Group I) とEF30%以下の27例 (Group II) について心機能の比較を行った. 術後心機能指標としてRI心プールシンチ上左室駆出率 (EF), 最大駆出速度 (PER), 最大充満速度 (PFR), 拡張早期最大充満速度 (1/3PFR) などを検討した. 術後心機能に関して Group IではEF, PER, PFR, 1/3PFRともに術前に比較して有意の改善を認めたが, Group IIではEF, PER, PFRの改善は認められるも1/3PFRの改善が不良であった. 術後心機能を Group I, II群間で比較すると Group II群では明らかに低値であった (EF-Group I: 40±11, Group II: 26±9%, PER-Group I: 261±75, Group II: 164±52%EDV/sec, 1/3 PFR-Group I: 174±74, Group II 114±47%EDV/sec). さらに Group II群をEDVI 140ml/m2以上の7例と, それ以下の20例で比較すると明らかにEDVI 140ml/m2以上の例では術後心機能および左室局所壁運動が不良であったが, 術前狭心症を有する例では臨床症状の改善が得られた. EDVI 200ml/m2を超えるような左室容積増大例では術後不整脈発生に対する管理が重要と考えられた.
  • 真鍋 晋, 長岡 秀郎, 印南 隆一, 大貫 雅裕, 広岡 一信
    1997 年 26 巻 5 号 p. 293-297
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1991年より1995年までの6年間に経験した胸部および腹部の真性重複大動脈瘤8症例を対象として治療手順などについて検討を加えた. 男性6例, 女性2例で, 年齢は50歳から73歳までの平均65.6歳であった. 大動脈瘤における重複大動脈瘤の頻度は10%と比較的多く, 全大動脈瘤患者に対し大動脈全長の検索を施行すべきと思われた. 治療は5症例に対し胸部, 腹部のいずれにも手術を行い, 2症例に対して腹部のみ, 1症例に対しては胸部のみ手術を行った. 二期的手術では1症例のみ胸部手術を優先し, 4症例で腹部手術を優先した. 二期的手術患者の待機中の動脈瘤の破裂はなかった. 手術の優先順位は破裂の頻度の高いものから行うのが原則であるが, 破裂の危険性が同程度であれば残存動脈瘤の破裂と血栓遊離による脳梗塞に配慮して, 胸部大動脈瘤の大きさと部位から手術順位を決定することが重要であると考えられた.
  • 手術時年齢と破裂の有無を中心に
    大木 聡, 石川 進, 荻野 隆史, 大滝 章男, 高橋 徹, 長谷川 豊, 山岸 敏治, 坂田 修治, 村上 淳, 森下 靖雄
    1997 年 26 巻 5 号 p. 298-301
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤 (AAA) 手術耐術例135例中, 遠隔期に追跡可能であった98例 (男85, 女13) を対象とし, 手術時年齢と破裂の有無を中心にAAAの術後遠隔期成績を検討した. 観察期間は2~113か月 (平均44±2か月) で, 75歳未満症例の5年生存率は73.4%, 75歳以上のそれは75.0%で, 累積生存率では両群間に差がなかった. 非破裂瘤の5年生存率は71.2%と破裂瘤の46.9%と比べて有意に (p<0.01) 高く, 累積生存率で2群間に有意差を認めた. 破裂瘤の遠隔期での死因は, 全例動脈硬化に起因した疾患であった. 術後9例に悪性腫瘍が発症し, うち6例を失った. 75歳以上症例の遠隔期生存率は, 75歳未満と有意差なく, 高齢者でも積極的な手術が望ましい. 破裂瘤の遠隔期生存率は非破裂瘤より不良であることからも, AAA遠隔期成績の向上には, 動脈硬化に起因した他の疾患および悪性腫瘍に対する注意が必要である.
  • 秦 光賢, 大平 政人, 長 伸介, 奈良田 光男, 畑 博明, 瀬在 幸安
    1997 年 26 巻 5 号 p. 302-307
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    CABGにおける左内胸動脈 (LITA) の free flow (FF) の許容下限は40~80ml/minとされてきた. 過去6年間に当施設で施行したCABG 120例中, LADに対してLITAを使用した71例を対象に, 術中のFF21ml/min以上のH群57例と20ml/min以下のL群14例に分け, 術後早期のグラフト造影所見より検討を加えた. 両群ともタバコ, 糖尿病, 高血圧, 高脂血症等の risk factor において有意差は認められなかった. 術後2か月目のグラフト造影所見では, H群で3例の閉塞と7例の string sign を認め, L群では string sign を1例に認めるのみで, 両群間に有意差は認められず, グラフトの早期開存率はH群94.7%, L群100%と良好であった. 以上より, LITA-FFは20ml/min以下でもグラフトとして十分適応可能であると考えられた.
  • 坂東 道哉, 広瀬 一, 松本 興治, 柴田 雅也, 今泉 松久, 熊田 佳孝, 高木 寿人, 村川 真司, 森 義雄, 不破 誠行
    1997 年 26 巻 5 号 p. 308-312
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腹部悪性腫瘍と併存する腹部大動脈瘤 (AAA) の外科的治療方針について, 当科で経験した症例に基づき検討した. 最近8年間にAAAと腹部悪性腫瘍を併存した6例 (結腸癌3例, 胃癌2例, 肝臓癌1例) を対象とした. AAA術前に胃癌と診断されていた2例に対して, AAAと腹部悪性腫瘍の手術を一期的に行った. AAAに肝臓癌と虚血性心疾患が併存した症例に対して, AAAを経過観察とし, 冠血行再建術と肝切除術を一期的に行い, 瘤径が拡大した4か月後に人工血管置換術を行った. また, 術前に結腸癌を診断された症例に対して, 術中の人工血管の感染性の問題を考慮し, AAA手術を先行し, 50日後に右半結腸切除術を行った. AAA手術中に結腸癌を発見された2例のうち, 1例は瘤径が比較的小さかったため, 結腸切除術を先行したが, 術後肝転移を指摘され, 生命予後を考慮しAAA放置することとなり, 術後7か月目に癌死した. 他の1例はAAAと結腸癌の両者ともそれぞれ瘤径, stage からみて待機不可能であったため, 一時的人工肛門造設を伴う一期的手術を施行した. 人工血管への汚染などに留意し, AAAに対して人工血管置換術を行った5例はいずれの症例も, 人工血管感染等の術後合併症を回避することができた. 術後肝転移で放置した1例を除く5例のAAA症例は現在も健在であり, 悪性疾患併存例の術後最長生存期間は46か月である. AAAと腹部悪性腫瘍の両者とも, 外科的に治癒が可能な場合, 基本的に一期的に手術を行う当科の治療方針において, 良好な結果を得た. 下部消化管疾患が併存した場合は, 症例ごとにAAA破裂の危険性や悪性腫瘍根治性の問題などについて十分検討した上で一期的手術か, 二期的手術かを決定すべきである.
  • 林 載鳳, 佐々木 秀, 川本 純
    1997 年 26 巻 5 号 p. 313-317
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    当施設で末梢動脈バイパス手術に用いたIMPRA™, Bionit™, GELSOFT™, 大伏在静脈の4種類のグラフト材料について, グラフト閉塞の場合とグラフト開存の場合に分けてその描出像を比較検討した. グラフト開存の場合は4種類のいずれも3D-CTAでグラフトが描出され, CT横断像でも内腔が高輝度に描出された. グラフト閉塞の場合, IMPRAと Bionit は3D-CTAでグラフトが描出されるもののCT横断像では内腔は低輝度であった. GELSOFTと大伏在静脈は3D-CTAでグラフトが描出されず, CT横断像でも内腔は低輝度であった. IMPRAと Bionit はグラフト閉塞の場合でも人工血管そのものが描出されるので注意を要することがわかった. グラフト開存の確実な診断のためには, バイパス末梢側の native 血管が造影されることと, 三次元画像構築前のCT横断像にてグラフト内腔が高輝度に描出されていることを確認する必要がある. またCTの閾値を変化させると閉塞血管が虫喰い状に描出されるので診断の参考となる.
  • 川嶋 隆久, 上沢 修, 大木 伸一, 長谷川 伸之, 小西 宏明, 川人 宏次, 登坂 直規, 三澤 吉雄, 加藤 盛人, 布施 勝生
    1997 年 26 巻 5 号 p. 318-321
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    待機的腹部大動脈瘤 (AAA) 手術53例が対象で, 術前自己血非貯血群31例 (A群) と400ml貯血群22例に分類した. 貯血群は, B群12例 (Fe投与) と, C群10例 (FeとrHuEPO投与) に分類した. 以上3群について, 出血量, 輸血量, 同種血無輸血率, Hb値の推移について検討した. 次に, 最大瘤径7cm以下の43例とそれより大きな10例に分け, 同様の検討を加えた. 全例に術中自己血回収装置を使用した. A群, B群, C群間に年齢, 性差, 手術時間, 出血量, 輸血量に差はなかった. A群では250±370mlの同種血を, B群, C群では400mlの貯血自己血を輸血した. 同種血無輸血率は, A群58%, B群100%, C群100%であった. 術直前Hb値は, 自己血貯血に伴いB群で低下, C群では変わらなかった. 術後最低Hb値はC群で高かった. 瘤径の大小による差はなかった. 術前自己血400ml貯血により, AAA手術における同種血輸血は100%回避でき, rHuEPO併用により, より安全な手術が可能と考えられた.
  • 大楽 耕司, 齋藤 聰, 山下 晃正, 土生川 光成, 森景 則保, 吉村 耕一, 久我 貴之, 藤岡 顕太郎, 加藤 智栄, 藤村 嘉彦, ...
    1997 年 26 巻 5 号 p. 322-326
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    多発性大動脈瘤症例を対象とし, その形態, 部位, 手術時期, 合併症等につき検討した. 当科で経験した多発性大動脈瘤14例を対象とした. 男性10例, 女性4例で平均年齢は66歳であった. その内訳は弓部-胸腹部1例, 弓部-腎動脈下6例, 胸部下行-腎動脈上1例, 胸部下行-腎動脈下5例, 胸腹部-腎動脈下1例であった. 瘤径は胸部63±13mm, 腹部54±13mmであった. 一期的手術を施行したのは胸腹部-腎動脈下の1例のみであった. 二期的手術を施行したのは8例で, 弓部-腎動脈下5例, 胸部下行-腎動脈下2例, 弓部-胸腹部1例であった. これらのうち弓部優先3例, 腹部優先5例であった. 術後合併症は脊髄麻痺1例, 腸管壊死1例, 腎障害2例, 呼吸障害2例, 肝障害1例であった. 手術死亡なく遠隔期に3例の死亡を認めた. 多発性大動脈瘤の手術には, 瘤径の大きいほうを優先し二期的に手術を行うほうが望ましい.
  • 迫 秀則, 葉玉 哲生, 森 義顕, 重光 修, 宮本 伸二, 添田 徹, 吉松 俊英, 卜部 省悟, 和田 朋之, 内田 雄三
    1997 年 26 巻 5 号 p. 327-329
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は81歳の女性で1995年3月26日, 突然の胸背部痛で発症した. 胸部CT検査では DeBakey II型・早期血栓閉塞型急性大動脈解離と診断した. 上行大動脈が55mmに拡大し胸痛が持続するため, 4月13日, 脳分離体外循環下に上行部分弓部大動脈置換術を行った. 手術所見では, 上行大動脈から弓部に及ぶ中膜層に血腫が存在し, 血栓閉塞していた. 内膜面を観察すると動脈硬化性病変が強く, その潰瘍の一つが血腫に穿通していた. 通常解離のように, 動脈硬化病変を伴わない部位の内膜が断裂し entry を形成したものとは機序が異なっていた. したがって一般に動脈硬化性病変が少ないとされる上行大動脈に発生した intramural hematoma と診断した. この病態は, 本邦では血栓閉塞型大動脈解離に含まれている可能性がある.
  • 山崎 武則, 小林 淳剛, 大原 啓示, 中山 雅人, 杉村 修一郎
    1997 年 26 巻 5 号 p. 330-333
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は9歳, 男児. 大動脈弁性および弁上部狭窄のため4か月時に心不全が増悪し直視下交連切開術を施行した. 6歳時, 感染性心内膜炎 (以下IE) に罹患した. 内科的療法で治癒したが, 左室大動脈間に90mmHgの圧較差を認めた. その後 balloon valvuloplasty を2回施行したが有意な改善は認められず, 7歳時に再度交連切開術および Doty 手術を施行した. 9歳時, 労作時の息切れが出現したため, 今野法による大動脈弁置換術 (19mmSJM AHP弁) を施行した. 術後約1年になる現在, 患児は元気に学校生活を送っている. このような症例の治療戦略について反省を含めて考察した.
  • 前田 英明, 根岸 七雄, 塩野 元美, 石井 良幸, 新野 成隆, 折目 由起彦, 河野 秀雄, 井上 龍也, 瀬在 幸安
    1997 年 26 巻 5 号 p. 334-337
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    72歳女性の腎動脈下腹部大動脈瘤術後5年目に腎動脈上, 横隔膜下に及ぶ腹部大動脈瘤を認め, 手術を施行した. Stoney の方法に準じ, 開胸腹膜外到達法を用い, 大動脈に到達した. 補助手段として, 下大静脈脱血, 大腿動脈送血の Biopump, 人工肺を用いたV-Aバイパスを造設し, 大動脈遮断中, 腹腔動脈, 上腸間膜動脈, 左右腎動脈に循環カテーテルを用いて灌流を行った. 術直後は軽度の腎機能障害, 肝機能障害が出現したが, 第20病日, 大動脈造影で再建分枝の開存を確認し, 退院した. 本例のような虚血性心疾患を合併した再手術例では, V-Aバイパス補助下の手術が臓器保護, 循環動態の安定に推奨されると思われた.
  • 森山 由紀則, 豊平 均, 金城 玉洋, 福枝 幹夫, 久冨 光一, 下川 新二, 平 明
    1997 年 26 巻 5 号 p. 338-341
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    61歳の男性で二尖弁による大動脈弁閉鎖不全に急性A型大動脈解離をきたしSJM25A弁による大動脈弁置換と上行大動脈置換術を施行した. エントリーは上行大動脈中央部前壁に認めた. 弁輪より約3cm高位側と腕頭動脈直下で上行大動脈を離断切除し偽腔をGRF糊で補強閉鎖し人工血管との直接吻合を行った. 術後2か月目に大動脈基部の再解離から吻合部破綻をきたし, 再度緊急手術を行った. 人工弁機能は正常で, 同弁を温存した Cabrol 法による冠状動脈再建術を施行し, 同時に剥離操作中に損傷した遺残解離腔を伴い拡大した弓部大動脈を全置換し救命した. 本症例での手術を中心に検討した.
  • 古賀 正哲, 宮原 健吉, 豊平 均, 下川 新二, 森山 由紀則, 平 明
    1997 年 26 巻 5 号 p. 342-344
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    冠動脈造影の際, 偶然発見された右腎動脈瘤を切除し, 切除断端は直接縫合して動脈再建した. 内臓動脈瘤のうち, 腎動脈瘤は脾動脈瘤に次ぐ頻度とされるが本邦での報告例は少ない. 同時に胆石症を合併しており, 胆嚢摘出術を行った.
  • 野本 卓也, 上田 裕一, 荻野 均, 杉田 隆彰, 森岡 浩一, 榊原 裕, 松林 景二, 三木 成仁, 田畑 隆文
    1997 年 26 巻 5 号 p. 345-347
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Stanford A型大動脈解離の手術において, 大腿動脈送血後に偽腔灌流をきたした稀な症例を経験した. 本例では entry が下行大動脈に存在し, 上行大動脈まで逆行性に解離が及んでいたが, 大腿動脈送血開始後, 体外循環流量の増加に伴い, 偽腔拡大・真腔圧迫をきたしている様子が, 経食道エコーで観察された. 大腿動脈送血を中止して自己心拍出量を維持し, 次いで左室心尖部より送血管を上行大動脈内の真腔に挿入して送血することで対処できた. 大動脈解離の緊急手術では, 術中経食道エコーによる血流の確認が必須であるとともに, 大腿動脈送血で偽腔灌流となった場合, 緊急処置として左室心尖部から上行大動脈への送血管留置による送血が有効と考えられた.
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