抄録
自己血回収装置 (以下CS) の使用による溶血と腎機能について, CS使用症例39例 (CS使用群) とCS導入前の19症例 (CS非使用群) とを比較検討した. 年齢, 性別, 術中出血量に両群間に有意差を認めなかった. CS使用群の完全無輸血例は23例 (59%), 平均輸血量は濃厚赤血球13±1.8単位であった. CS非使用群は3例16% (p<0.05) のみが無輸血例で, 平均輸血量は4.9±3.1単位と有意に (p<0.05) CS使用群に少なかった. 術後のGOT値とLDH値の最高値はCS使用群が有意に (p<0.05) 高値を示したが, 腎機能では血清クレアチニン値, BUN値は両群間に有意差はなかった. また, CS使用群の完全無輸血例20例では術後2, 3日目まで貧血の進行を認めた. CSの使用により, 待機的腹部大動脈瘤手術の59%に完全無輸血が可能であったが, 術後の血液破壊と, それによる一過性の貧血の進行を認めた. しかし, 溶血による腎機能の悪化は認めなかった.