日本心臓血管外科学会雑誌
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腹部大動脈瘤手術における自己血回収装置の使用と溶血および腎機能の検討
中村 都英鬼塚 敏男矢野 光洋矢野 義和中村 栄作
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1999 年 28 巻 4 号 p. 243-246

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抄録
自己血回収装置 (以下CS) の使用による溶血と腎機能について, CS使用症例39例 (CS使用群) とCS導入前の19症例 (CS非使用群) とを比較検討した. 年齢, 性別, 術中出血量に両群間に有意差を認めなかった. CS使用群の完全無輸血例は23例 (59%), 平均輸血量は濃厚赤血球13±1.8単位であった. CS非使用群は3例16% (p<0.05) のみが無輸血例で, 平均輸血量は4.9±3.1単位と有意に (p<0.05) CS使用群に少なかった. 術後のGOT値とLDH値の最高値はCS使用群が有意に (p<0.05) 高値を示したが, 腎機能では血清クレアチニン値, BUN値は両群間に有意差はなかった. また, CS使用群の完全無輸血例20例では術後2, 3日目まで貧血の進行を認めた. CSの使用により, 待機的腹部大動脈瘤手術の59%に完全無輸血が可能であったが, 術後の血液破壊と, それによる一過性の貧血の進行を認めた. しかし, 溶血による腎機能の悪化は認めなかった.
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