抄録
今回われわれは当科において過去20年間に経験した心臓粘液腫連続17例の臨床像・手術術式・手術成績について検討を加えた. 男性5例・女性12例, 年齢は22~78歳 (平均55歳), 発生部位は左房13例・右房2例・右室1例・多発例1例であった. 左房粘液腫摘出術は2例を除き, 両心房縦切開を用いた心房中隔合併切除・腫瘍摘出術を標準術式とし, うち2例に僧帽弁輪縫縮術を追加した. 摘出した粘液腫の重量は6~310g (平均54g) であった. 手術・病院死亡はなかったが, 術後9年目に再発1例 (多発例・他院にて再手術) を認めた. おもな術後合併症は洞不全症候群 (ペースメーカー植え込み術) を1例, 術後一過性心房細動を2例, 術後急性肺水腫 (右室粘液腫摘出術直後) を1例認めた. 長期遠隔成績は追跡率100%, 平均観察期間約7年1カ月で, 17例中2例を非心臓死で失い, 10年累積生存率は75% (n=6) であった. 左房粘液腫に対しては発生母地を直視下に観察でき腫瘍を en bloc に摘出できる両心房縦切開を用いた心房中隔合併切除・腫瘍摘出術は有用であると思われる.