2000 年 29 巻 6 号 p. 400-403
特発性血小板減少性紫斑病 (idiopathic thrombocytopenic purpura: ITP) を合併した大動脈弁狭窄症 (AS) の66歳, 女性に対し, 脾臓摘出術と大動脈弁置換術を一期的に行った. 入院時の血小板数は6.0万/mm3と低値であったが, γ-グロブリン投与 (400mg/kg/day) を5日間行い, 手術直前には7.0万/mm3と軽度増加した. 手術は脾臓摘出術を先行し, ついで大動脈弁置換術 (ATS 19mm) を行った. 術後は血小板が徐々に増加し, 第15病日に22.5万/mm3となった. γ-グロブリン多量静注療法後に弁置換術と脾臓摘出術を同時に施行したのは今回で2例目であり, ITP合併症例の開心術では, 術前のγ-グロブリン多量静注療法後と同時脾臓摘出術の組み合わせはITPの寛解も期待でき, 有効な治療戦略であると思われた.