日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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29 巻, 6 号
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  • 郷良 秀典, 加藤 智栄, 小林 俊郎, 西田 真彦, 平田 健, 美甘 章仁, 岡田 治彦, 浜野 公一, 善甫 宣哉, 江里 健輔
    2000 年 29 巻 6 号 p. 363-367
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    体外循環中の肺障害に好中球が関与しているか否かを知る目的で, 体外循環前後で肺循環での顆粒球エラスターゼ, ミエロパーオキシダーゼ産生量および respiratory index を測定した. 体外循環後, 肺循環での顆粒球エラスターゼ, ミエロパーオキシダーゼ産生量および respiratory index 値は有意に上昇した. さらに体外循環後の肺循環での顆粒球エラスターゼ, ミエロパーオキシダーゼ産生量は術前肺動脈圧および respiratory index の変化率と正の相関を示した. これらの結果から, 体外循環中の肺機能障害に好中球が強く関与しており, 肺高血圧症例でそれがより顕著であることが示された.
  • 中村 浩己, 畑 隆登, 津島 義正, 松本 三明, 濱中 荘平, 吉鷹 秀範, 毛利 亮, 近澤 元太, 篠浦 先, 南 一司, 大谷 悟
    2000 年 29 巻 6 号 p. 368-372
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    CABGにおける橈骨動脈グラフト (RA) の有用性についての報告は数多くみられるが, 術後の握力, 浮腫, 知覚障害などの問題を詳細に検討した報告は認められない. CABGの連続30症例を対象として, prospective study を行った. RAを使用した症例をR群 (n=14), 使用しなかった症例をC群 (n=16) とした. 手術時間, 体外循環時間, 大動脈遮断時間などで, 両群間に有意差はみられなかった. R群では, グラフト採取側握力が術後低下したが, C群との有意差はみられなかった (術後1カ月: R群=26.2±9.6kg, C群=26.2±7.5kg). R群では術後に浮腫 (左右前腕周径差) がみられたが (術後1週間: 3.5±3.6mm), 経時的に徐々に回復する傾向がみられた (術後1カ月: 1.9±2.6mm). 術後皮膚の知覚異常はみられなかった. 以上より, R群はRA採取側前腕に臨床上大きな問題を残すとはいえず, 安全であると考えられた.
  • (フランス・Trousseau 病院での経験)
    中島 博之, Michel Marchand
    2000 年 29 巻 6 号 p. 373-377
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1984年から1995年12月にかけて, Carpentier-Edwards 牛心嚢膜弁を用いて大動脈弁置換術を施行した60歳以上の652例について遠隔成績を検討した. 平均年齢は72.2±6.7歳で, 約7割が男性であった. 1996年の7月からの3カ月の調査期間において, 1例を除き全症例の追跡が可能で, 平均観察期間4.4年, 累積観察期間2,802患者・年であった. 遠隔期死亡は138例で, そのうち弁関連死亡は30例であった. 弁関連合併症としては, 塞栓症37例, 感染弁14例, 出血10例, 再手術8例, 人工弁機能不全2例であった. 術後12年の人工弁機能不全非発生率は98±2%, 再手術の回避率は96±4%, 弁関連合併症の非発生率は58±25%, 弁関連死亡非発生率は76±24%であった. 牛心嚢膜弁は術後遠隔期の弁関連合併症, とくに人工弁機能不全の発生は少なく, 60歳以上の高齢者に対する大動脈弁置換術においては優れた選択枝と考えられる.
  • 加藤 泰之, 磯部 文隆, 野地 智, 佐々木 康之, 小寺 孝治郎, 石川 巧, 島村 吉衛, 熊野 浩, 長町 恵磨, 大門 雅弘
    2000 年 29 巻 6 号 p. 378-381
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    リウマチ性三尖弁狭窄症 (TS) は最近では比較的希である. 今回われわれは, 僧帽弁狭窄症 (MS) に対する初回僧帽弁置換術 (MVR) の22年後に発症した三尖弁狭窄兼閉鎖不全症 (TSR) に対して単独三尖弁置換術 (TVR) を施した1例を経験したので報告する. 症例は54歳, 女性. 32歳時MSに対しMVR (Carpentier-Edwards 29mm) を施行. 42歳時人工弁機能不全のため再MVR (Duromedics 27mm) を施行. 1998年5月著明な下半身浮腫が出現した. 心臓カテーテル検査上肺高血圧を認め, 右房右室拡張期最大圧較差は6mmHgであり, TVR (Hancock-II 29mm) を施し, 術後浮腫は著明に改善した. 三尖弁の器質的変化がみられ, かつ肺高血圧を合併している場合TSを発症する素因があると考えられ注意深い経過観察が必要であると思われた.
  • 金 一, 大久保 正, 神垣 佳幸, 川田 典靖
    2000 年 29 巻 6 号 p. 382-385
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    今回われわれは急性大動脈解離 (DeBakey I型) 術後に発症した大動脈弁閉鎖不全症の1例を経験した. 術中所見にて前回の手術で大動脈基部の解離腔閉鎖部位に使用した Gelatin-resorcin-formalin glue (GRF糊) に一致した内膜側は茶褐色に壊死性様変化を示し, また人工血管との吻合部の一部には内膜剥離が認められた. 手術は Bentall 変法を用い, 左冠動脈には Piehler 法を, 右冠動脈は開口部を閉鎖して大伏在静脈を用いバイパス術を施行した. 病理所見では, 肉眼的に壊死組織様に認められた大動脈壁は変性した大動脈組織であり, また前回使用したGRF糊のゼラチンは認められなかった. 今回, 大動脈弁閉鎖不全症の発症に前回のGRF糊が関与していたと思われるが, その要因のひとつにホルマリンの使用量に問題があった可能性が示唆された.
  • 吉田 泰, 上村 和紀, 宇藤 純一, 北村 信夫
    2000 年 29 巻 6 号 p. 386-388
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は72歳, 男性. 慢性関節リウマチおよび間質性肺炎と診断されたさい, 胸部CT上弓部大動脈に径50mmの大動脈瘤を認めていた. ステロイド投与にて症状, 検査所見の改善を認めていたが, 治療経過中, 副作用と思われる糖尿病, 高血圧を発症したため対症的に治療しコントロールしていた. 治療開始から2カ月目, 意識消失発作にて胸部大動脈瘤破裂を発症した. CT上, 瘤径は60mmと拡大し周囲に血腫を認めた. 緊急で超低体温脳分離体外循環下に全弓部置換術を行い救命しえた. ステロイドが糖尿病, 高血圧などの副作用により, 動脈硬化性病変を増悪進展させ, 今回の急速な瘤径拡大, 破裂の一因となったと考えられた. 本例のように動脈硬化性病変を合併しかつステロイド投与を要する場合, 副作用のコントロールと同時に, 併存する動脈硬化性病変の慎重な経過観察が重要と考えられた.
  • 三角 隆彦, 西川 邦, 安戸 幹人, 山田 靖之, 熊丸 裕也
    2000 年 29 巻 6 号 p. 389-392
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腹腔動脈瘤はきわめて希な疾患で, とくに腹腔内破裂救命例の報告はほとんど認められていない. 今回われわれは, 腹腔動脈瘤腹腔内破裂例に対して, 緊急で経カテーテル的動脈塞栓術を施行し良好な結果を得たので報告する. 症例は72歳男性で, 上腹部痛を主訴にショック状態で搬入された. 腹部CT検査, 血管造影検査にて腹腔動脈瘤破裂, 腹腔内出血と診断し, 経カテーテル的動脈塞栓術を施行した. 塞栓術により瘤内への血流遮断が得られたが, 瘤末梢の血流は上腸間膜動脈からの側副血行路経由で確保された. 塞栓術後約1年現在, 瘤の縮小化と瘤内の血栓化を認めている.
  • 田中 常雄, 大川 育秀, 外山 真弘, 橋本 昌紀, 石田 成吏洋, 松本 興治
    2000 年 29 巻 6 号 p. 393-395
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は, 62歳男性. 仕事中, 突然意識消失となり当院に搬送された. 来院後心臓マッサージ下にPCPSを開始した. 緊急冠動脈造影では, LMTとLADに狭窄がみられたため, これらの部位に intervention を行った. しかしその後も, 左室機能が改善しないため, 入院3日目にLVASを装着した. 術式: 右傍胸骨小切開にて開胸した. まず心房間溝の剥離を行い右側左房を露出し脱血管を挿入した. ついで, 上行大動脈を部分遮断し, 送血管を縫着した. その後, 左室機能は徐々に改善し装着後9日目に離脱した. しかし, 離脱後2日目に不整脈にて死亡した. 本法は, 小切開で行い得るため, 術中, 術後の出血量は少なく有用な方法であると考えられた.
  • 末永 悦郎, 須田 久雄, 片山 雄二, 里 学, 山田 典子, 伊藤 翼
    2000 年 29 巻 6 号 p. 396-399
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は69歳男性, 遠位弓部, 胸腹部, 腎動脈下に真性動脈瘤を左腎動脈下と左総腸骨動脈に仮性動脈瘤を認め合計五つの重複動脈瘤を認めた. これに対し上行弓部全置換術と胸腹部全置換術の二期的手術を施行し良好な結果であった. 術前に自己血1,200mlを貯血し, 第一期手術を施行した. 胸骨正中切開後に上行大動脈送血, 右房脱血にて人工心肺を開始し直腸温18度にて循環停止とした. 順行性脳分離体外循環開始後, 4分枝付人工血管を用い上行弓部大動脈人工血管置換術を施行した. 第二期手術は第一期手術より約1カ月後に行った. この間自己血800mlを貯血した. spiral incision にて第6肋間開胸, 後腹膜アプローチにて行った. 主要分枝は, 腹腔動脈, 右腎動脈, 上腸間膜動脈, 左腎動脈の順に再建した. 肋間動脈はTh10, 11, L1の3対を再建した. 術後は対麻痺, 肝腎機能不全を認めなかった. 術式, 回路の工夫, 自己血貯血により無輸血手術が可能であった.
  • 広瀬 浩之, 塩野 元美, 折目 由紀彦, 八木 進也, 山本 知則, 奥村 晴彦, 秦 光賢, 根岸 七雄, 瀬在 幸安, 松川 吉博
    2000 年 29 巻 6 号 p. 400-403
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    特発性血小板減少性紫斑病 (idiopathic thrombocytopenic purpura: ITP) を合併した大動脈弁狭窄症 (AS) の66歳, 女性に対し, 脾臓摘出術と大動脈弁置換術を一期的に行った. 入院時の血小板数は6.0万/mm3と低値であったが, γ-グロブリン投与 (400mg/kg/day) を5日間行い, 手術直前には7.0万/mm3と軽度増加した. 手術は脾臓摘出術を先行し, ついで大動脈弁置換術 (ATS 19mm) を行った. 術後は血小板が徐々に増加し, 第15病日に22.5万/mm3となった. γ-グロブリン多量静注療法後に弁置換術と脾臓摘出術を同時に施行したのは今回で2例目であり, ITP合併症例の開心術では, 術前のγ-グロブリン多量静注療法後と同時脾臓摘出術の組み合わせはITPの寛解も期待でき, 有効な治療戦略であると思われた.
  • 下村 毅, 湯浅 毅, 碓氷 章彦, 渡邊 孝, 保浦 賢三
    2000 年 29 巻 6 号 p. 404-406
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    62歳, 女性に発症したA型大動脈解離の1手術例を経験した. 発症時のCTで, 上行大動脈の偽腔に血流を認めず, 発症1カ月時のCTで下行大動脈は3腔構造を示し, 大動脈造影で上腸間膜動脈直上の腹部大動脈にULPを認めた. 保存療法を施行されたが, 発症2カ月後のCTで, 上行大動脈の血腫は吸収され, 真腔が拡大し, 下行大動脈は2腔構造に変化した. 3カ月後のCTで, 上行大動脈の再解離を認めた. 大動脈造影で上行大動脈遠位部に限局した偽腔が造影され, 新たなULPが出現し, 腹部大動脈のULPは消失していた. 発症4カ月後に行った手術で, 上行大動脈近位部と右腕頭動脈直下に intimal tear を認め, 上行大動脈人工血管置換術を行った. 経過中, 多彩な形態変化を示した興味深い1例と考えられた.
  • 菅原 由至, 末田 泰二郎, 渡橋 和政, 渡 正伸, 岡田 健志, 石井 修, 松浦 雄一郎
    2000 年 29 巻 6 号 p. 407-409
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は53歳, 女性. 29年前に大動脈弁閉鎖不全症および僧帽弁狭窄症に対して大動脈弁置換術と僧帽弁交連切開術を当科で施行した. 弁置換術には Starr-Edwards ボール弁 (SE弁) (Model 2320) を使用した. 当科外来で経過観察中, 3年前より慢性心房細動になり, 6カ月前より労作時息切れが出現しNYHA II度となった. 心エコー検査で, 僧帽弁弁口面積は0.9cm2であり, SE弁の機能障害はなかった. 僧帽弁置換術, および左房のみのメイズ手術の予定で手術を開始したが, SE弁のケージ部の被覆布の広範な破損を伴っていたので, これらに加え大動脈弁位再弁置換術を行った. 術後経過は良好で, 洞調律に復した. 本症例は文献上本邦におけるSE弁置換後最長経過例であったが, この経験より, SE弁置換術後長期経過例では, 塞栓症の既往がなくとも被覆布破損の可能性を念頭に置く必要があると再認識した.
  • 末永 悦郎, 須田 久雄, 伊藤 翼
    2000 年 29 巻 6 号 p. 410-413
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    上行大動脈瘤に伴う sino-tubular junction (STJ) の拡大が原因のARは, 自己弁温存のよい適応といわれている. 今回われわれはARを有する巨大上行大動脈瘤破裂に対し自己弁温存術式にて救命しえたので報告する. 症例は68歳, 女性. 心タンポナーデ, ショックにて来院, 胸部CTにて最大径11cmに及ぶ巨大上行大動脈瘤を認め, 心エコーでは心嚢液貯留とAR IV度を認めた. 大動脈はSTJから腕頭動脈起始部まで著明に拡大していたが, 大動脈弁尖には異常を認めず, 自己弁温存大動脈基部再建術が可能と判断した. 弁輪径は25mmであったため Yacoub らの術式に準じた aortic root remodeling を施行した. 術中内視鏡にて弁の良好な coaptation を確認した. 術後大動脈造影では, 軽度の逆流が残存していたが, 術後2週間で軽快退院となった. 弁輪拡大が軽度で上行大動脈瘤やSTJの拡大に伴った大動脈弁逆流に対しては, aortic root remodeling 法がよい適応と考えられた.
  • 高倉 宏充, 佐々木 達海, 橋本 和弘, 蜂谷 貴, 小野口 勝久, 鴛海 元博, 竹内 成之
    2000 年 29 巻 6 号 p. 414-417
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は69歳・女性. 平成9年3月26日, 僧帽弁狭窄症に対し僧帽弁置換術を行い, 外来通院中であった. 同年9月13日, 呼吸困難, 起座呼吸をきたし救急来院. Valve cine 撮影にて stuck valve と診断し, 緊急再弁置換術を施行した. 術後の血液凝固系の検索にて抗リン脂質抗体症候群と診断されたため通常より厳密な抗凝固療法を行ったが, 約1カ月半後にふたたび stuck valve をきたし生体弁による再々弁置換を行った. 本症候群を合併する僧帽弁疾患症例に対しては, 自己弁温存術式を第一選択とし, 人工弁置換を余儀なくされた場合は生体弁の選択が望ましい.
  • 高橋 隆一, 木曽 一誠, 森 厚夫, 井上 仁人
    2000 年 29 巻 6 号 p. 418-421
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は, 74歳の男性で, 食思不振で他院に入院中, 突然の呼吸状態悪化に伴い人工呼吸器管理および右鎖骨下静脈からの中心静脈栄養が開始された. 以後, 発熱が出現, 呼吸状態も改善されないため, 当院に搬送された. CT検査にて, 上行大動脈瘤破裂 (sealed rupture) と診断, 手術を行った. 嚢状動脈瘤が上行大動脈遠位部に認められたが, 周囲との癒着が強固であったため, 超低体温循環停止法下に75×65mmの瘤を切開し, 径30mmの瘤口部をパッチ閉鎖した. 術後は, とくに合併症もなく, 42日目に退院した. 病理組織学的検査にて, 外膜のみで構成された動脈瘤壁には, 著明な線維化肥厚および好中球, プラズマ細胞, マクロファージの浸潤が認められ, 炎症性仮性大動脈瘤と判断された.
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