2000 年 29 巻 6 号 p. 410-413
上行大動脈瘤に伴う sino-tubular junction (STJ) の拡大が原因のARは, 自己弁温存のよい適応といわれている. 今回われわれはARを有する巨大上行大動脈瘤破裂に対し自己弁温存術式にて救命しえたので報告する. 症例は68歳, 女性. 心タンポナーデ, ショックにて来院, 胸部CTにて最大径11cmに及ぶ巨大上行大動脈瘤を認め, 心エコーでは心嚢液貯留とAR IV度を認めた. 大動脈はSTJから腕頭動脈起始部まで著明に拡大していたが, 大動脈弁尖には異常を認めず, 自己弁温存大動脈基部再建術が可能と判断した. 弁輪径は25mmであったため Yacoub らの術式に準じた aortic root remodeling を施行した. 術中内視鏡にて弁の良好な coaptation を確認した. 術後大動脈造影では, 軽度の逆流が残存していたが, 術後2週間で軽快退院となった. 弁輪拡大が軽度で上行大動脈瘤やSTJの拡大に伴った大動脈弁逆流に対しては, aortic root remodeling 法がよい適応と考えられた.