抄録
成人開心術24例を送血温の復温速度0.1℃/minで緩徐復温群 (S群) と急速復温群 (R群) に分類し, 体外循環復温期における脳血流と脳酸素代謝の変動を検討した. 経頭蓋ドプラ血流計を用いて中大脳動脈平均血流速 (mean MCAv) を測定し, 体外循環前値を基準とした変化率で脳血流変化を評価した. この mean MCAvと脳動静脈血酸素含量較差の積を脳酸素消費指数 (D-CMRO2) と定義し, 脳酸素代謝の指標とした. また, 同時に近赤外線分光法で脳内酸素量変化を表す酸化ヘモグロビン (Oxy Hb) を測定した. S群では全経過で mean MCAvがD-CMRO2を上回り平衡して変動したが, R群では復温開始後のD-CMRO2は mean MCAvに比べて大きく増加し, 復温終期に mean MCAvを上回った. また, R群の復温期に内頸静脈血酸素飽和度やOxy Hbの急激な変化を認めた. 体外循環の急速復温により, 脳血流と脳酸素代謝の均衡が破綻する可能性が示された.