日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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30 巻, 1 号
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  • 本多 祐, 上平 聡, 石黒 真吾, 黒田 弘明, 応儀 成二, 森 透
    2001 年 30 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    成人開心術24例を送血温の復温速度0.1℃/minで緩徐復温群 (S群) と急速復温群 (R群) に分類し, 体外循環復温期における脳血流と脳酸素代謝の変動を検討した. 経頭蓋ドプラ血流計を用いて中大脳動脈平均血流速 (mean MCAv) を測定し, 体外循環前値を基準とした変化率で脳血流変化を評価した. この mean MCAvと脳動静脈血酸素含量較差の積を脳酸素消費指数 (D-CMRO2) と定義し, 脳酸素代謝の指標とした. また, 同時に近赤外線分光法で脳内酸素量変化を表す酸化ヘモグロビン (Oxy Hb) を測定した. S群では全経過で mean MCAvがD-CMRO2を上回り平衡して変動したが, R群では復温開始後のD-CMRO2は mean MCAvに比べて大きく増加し, 復温終期に mean MCAvを上回った. また, R群の復温期に内頸静脈血酸素飽和度やOxy Hbの急激な変化を認めた. 体外循環の急速復温により, 脳血流と脳酸素代謝の均衡が破綻する可能性が示された.
  • 木川 幾太郎, 福田 幸人, 山下 洋一, 鰐渕 康彦
    2001 年 30 巻 1 号 p. 7-10
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Extended retroperitoneal approach による腹部大動脈瘤手術159例を対象に手術成績を検討した. 男性132例, 女性27例, 平均年齢69.3歳. 手術は tube graft 67例, 骨盤内Y-graft 67例, 末梢側吻合を大腿動脈としたY-graft 25例であった. 手術死亡 (30日以内)は2例 (1.3%) で, 下肢血流障害によるMNMSにより死亡. 病院死亡は2例 (1.3%) で, 術前より複数の合併疾患を有し手術適応に問題のあった high risk 症例であった. 術後合併症として血流障害13例, 消化器11例, 創9例, 肺7例, 心6例, 脳4例などを認めた. 術後透析導入例は認めず. 術後経口摂取開始は平均2.7日, 生存例の術後入院期間は平均16.9日. 無輸血率は64%であった. 本法による手術では, 経口摂取開始が早く全身状態の回復が早い, 輸血量が少ない, 入院期間が短いなどの利点がある. 本法の成績は良好で, 高齢者や high risk 症例に対する手術適応拡大のためにも有用な術式である.
  • 石田 徹, 西田 博, 冨澤 康子, 野地 智, 冨岡 秀行, 森下 篤, 遠藤 真弘, 小柳 仁
    2001 年 30 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    In situ 動脈グラフトとしてCABGに使用可能なLITA, RITA, GEAを用いた4枝以上のCABG62例 (4枝60例, 5枝1例および6枝1例) を検討した. 対象は男性59例, 女性3例, 年齢は41~82 (平均59.6) 歳. 緊急手術5例 (8%), 心筋梗塞の既往37例 (60%), 糖尿病30例 (48%), 慢性透析6例 (10%), 左室駆出率40%以下15例 (24%). 観察期間は1~101カ月 (平均32カ月). 開存率は sequential (seq.): individual (ind.) ではLITA96.7%: 100%, RITA100%: 100%, GEA89.5%: 97.4%でseq. と ind. に開存率の差はなかった. Seq. のなかではGEAの端側吻合部の閉塞が多く (側々0/19, 端側4/19, p=0.03) LITAの端側吻合部と比較し有意に高率であった(LITA1/44, GEA4/19, p=0.01). 5年全死亡回避率は49.6%, 5年心事故回避率は87.2%. GEAの sequential グラフトの適応には末梢部のグラフト径を含めた慎重な検討が重要である.
  • 磯松 幸尚, 津久井 宏行, 星野 修一, 西谷 泰
    2001 年 30 巻 1 号 p. 15-18
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    大動脈炎症候群8例を, 大動脈弁病変のみのA群3例と冠動脈病変を有するB群5例に分けて検討した. 症例は全例女性で手術時年齢は42~68歳 (平均53.8歳). A群は3例とも大動脈弁置換術 (AVR) が行われ, B群中2例は大動脈冠動脈バイパス手術 (CABG) のみ施行, 3例がCABG+AVRを施行された. AVRは全例で器械弁を使用した. CABG術式は静脈グラフトのみ3例, 左内胸動脈グラフト+静脈グラフト2例であった. 術後は赤血球沈降速度を指標として6例でステロイドを内服した. B群中劇症肝炎 (術後2カ月目), 呼吸不全 (3年2カ月後), 脳梗塞 (6年後) の各1例を失った. 術後5年生存率は65.6%, 10年生存率は32.8%であった. ステロイド離脱可能であったのはA群中1例のみであった. 高安病に由来する冠動脈病変に対する外科治療はいまだ問題点が存する. 手術後にも炎症のコントロールのためにステロイド投与を行うべきであり, 厳重な管理が必要である.
  • 七条 健, 大庭 治, 柚木 継二, 井上 雅博
    2001 年 30 巻 1 号 p. 19-22
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1982年から1999年3月までに使用した大動脈弁位SJM弁276個のうち, 6個 (2.2%) に対し再弁置換術を行った. いずれも大動脈弁狭窄の状態で, 連続波ドプラー法による人工弁通過血流の最高流速は, 3.5~5.4m/sec, 平均4.55m/sec, 圧較差にして約83mmHgと著明に増大していた. 3例がパンヌス, 1例が血栓によるもので, 2例は prosthesis-patient mismatch と思われた. パンヌス発生に関係する因子として, 人工弁の方向が影響している可能性があると考えており, 心室中隔に垂直になるように縫着すべきと思われた. 大動脈弁位SJM弁の再手術回避率は満足できるものであるが, 少ないながら再弁置換術を必要とする症例があり, 超音波検査を中心とした厳重な follow が必要と思われた.
  • 小長井 直樹, 前田 光徳, 矢野 浩己, 工藤 龍彦, 石丸 新
    2001 年 30 巻 1 号 p. 23-25
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤 (AAA) または閉塞性動脈硬化症 (ASO) の症例に冠動脈病変が合併し, 冠動脈バイパス術 (CABG) が一期的または二期的に行われる報告は増えているが, 弁膜症と動脈硬化性病変の合併例に対する手術報告は少ない. 今回われわれは, 両側腸骨動脈閉塞を合併したLVEF24.3%の低心機能AR症例に対し, IABPルートの確保と末梢循環不全予防の目的で, Carbomedics 弁によるAVRと Hemashield-Y 型人工血管による血行再建術を一期的に同時進行させた. 開胸開腹による手術侵襲は大きいが, 手術時間の短縮と良好な末梢循環を得ることで, IABPは必要とせず人工呼吸器からも容易に離脱できた.
  • 高倉 宏充, 佐々木 達海, 橋本 和弘, 蜂谷 貴, 小野口 勝久, 鴛海 元博, 竹内 成之
    2001 年 30 巻 1 号 p. 26-28
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は63歳・男性, 起座呼吸を伴ううっ血性心不全のため当センターへ搬送された. 大動脈造影および経食道超音波心エコー図法にて, 大動脈四尖弁による大動脈弁閉鎖不全症と診断した. また冠状動脈造影で, すべての冠状動脈が右バルサルバ洞の同一口より起始し, 比較的まれな走行形態の単冠動脈であることが確認された. このきわめてまれな症例に対し大動脈弁置換術を施行したが, 選択的冠灌流を含む順行性の心筋保護法が不確実であったため, 逆行性持続冠灌流法にて手術を行い良好な結果であった.
  • 井上 雅博, 大庭 治, 七条 健, 中井 幹三, 新井 禎彦, 柚木 継二, 徳永 宜之
    2001 年 30 巻 1 号 p. 29-32
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    当科で1991年1月から1998年12月までに行った腹部大動脈瘤人工血管置換術は197例であった. そのうち2例 (1%) が原発性大動脈腸管瘻を伴った腹部大動脈瘤であった. 手術は瘻に対して直接閉鎖を, 腹部大動脈瘤に対しては感染の可能性のある大動脈瘤壁の摘出と人工血管置換術ならびに大網充填術を行った. 2例とも救命し得た. 感染源をなくし抗感染作用と抗炎症作用を有した大網を用いることによって感染と人工血管腸管瘻の予防は可能であった. 原発性大動脈腸管瘻に対して, 瘤壁切除, 人工血管置換術ならびに大網充填術が有効と思われた.
  • 金岡 祐司, 種本 和雄, 村上 貴志, 黒木 慶一郎, 南 一司, 杭ノ瀬 昌彦
    2001 年 30 巻 1 号 p. 33-35
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    常染色体優性遺伝の結合織疾患のひとつである Marfan 症候群においては骨格, 関節の異常, 眼症状および心血管の異常がみられる. 漏斗胸に対して胸骨翻転術を行った13年後に Stanford A型急性大動脈解離を発症した34歳, 男性に手術を行った. 手術は胸骨正中切開でアプローチして大動脈基部 Composite graft 置換術および弓部置換術を行った. 術後は翻転部の胸骨が動揺して flail chest となり15日間, 人工呼吸器による内固定を必要とした. Marfan 症候群においては, その生涯に何回かの心血管手術を行うことがあり, 漏斗胸手術後に胸骨縦切開を行う場合は注意が必要と思われた.
  • 大音 俊明, 増田 政久, 林田 直樹, ピアス 洋子, 中谷 充, 浮田 英生, 志村 仁史, 茂木 健司, 塚越 芳久, 中島 伸之
    2001 年 30 巻 1 号 p. 36-39
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Intravenous leiomyomatosis (IVL) は子宮筋腫あるいは子宮内静脈壁から生じた組織学的に良性な平滑筋腫が静脈内に成長進展したものと定義され, まれに右心系へ達することもある疾患である. 症例は43歳の女性で, 右内腸骨静脈から下大静脈を経て右房右室にいたるIVLに対し体外循環を用いた開心・開腹による腫瘤摘出術を行った. 体外循環を開始するさい, 下大静脈への脱血管挿入は腫瘤が障害となり困難であった. 経右房的腫瘤切除を行ったのち, 脱血管を挿入したが予想外に出血が多く血行動態の悪化を招いた. 経右房的腫瘤切除は循環停止下に行ったほうが安全かと思われた. また術後, 腫瘍組織が残存した場合には再発の可能性が高いので本症例では予防的に抗エストロゲン剤の投与を継続している. 術後2年4カ月を経過し静脈内に再侵入する腫瘍像は認めず手術および術後の薬物治療が有効であったと考えられた.
  • 黄 義浩, 堀越 茂樹, 水野 朝敏, 青木 功雄, 田口 真吾
    2001 年 30 巻 1 号 p. 40-43
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    上行大動脈が全周性管状に石灰化したいわゆる porcelain aorta 合併例では上行大動脈の操作により, 大動脈の解離や破裂, calcific debris による脳梗塞などをきたす可能性があり, 開心術に多くの問題を抱えている. 今回, porcelain aorta を伴う ischemic cardiomyopathy 症例に対し, 上行大動脈より occlusion balloon を挿入して血流を遮断し, 常温体外循環による心停止下に Dor 手術および冠動脈バイパス術を施行した. 現在, 大動脈遮断回避の補助手段として, 超低体温循環停止法, 心拍動下手術なども頻用されているが, 本症例は低左心機能症例であり, また, 左室切開を要する手術のため, 手術時間の短縮と確実な手術操作を得るには本法が有用であった.
  • 鴛海 元博, 橋本 和弘, 佐々木 達海, 蜂谷 貴, 小野口 勝久, 高倉 宏充, 竹内 成之, 古梶 清和
    2001 年 30 巻 1 号 p. 44-47
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    肺体動脈収縮期圧比70%の重症肺高血圧, 難治性心室頻拍 (VT) を合併した梗塞後左室瘤に対して, 心内膜梗塞瘢痕部の切除および cryoablation を伴う Dor 手術を施行した. 難治性VTが消失した点においては有効であった. しかし, 心収縮能は比較的良好に改善したものの拡張能の改善はなく, 低左心機能および重症肺高血圧は残存した. 僧帽弁閉鎖不全症を伴わない, あるいは肺血管病変を伴う肺高血圧症例においては, 術後の左心拡張能の改善があまり期待できないことから, 十分 Dor 手術の適応を考えるべきで, かかる症例に対しては心臓移植を含めて慎重に検討していく必要があると考えられた.
  • 僧帽弁・三尖弁修復による1治験例
    長谷川 順一, 門場 啓司, 長阪 重雄
    2001 年 30 巻 1 号 p. 48-50
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は37歳男性. 学童時に心室中隔欠損症で2度の手術を受け, 31歳頃から僧帽弁閉鎖不全兼三尖弁閉鎖不全症の診断で通院していた. 安静時にも呼吸困難が出現するようになり入院した. 両下肢の浮腫と腹部の著明な膨隆を認めた. 強心剤・利尿剤の投与により心不全症状は改善した. しかし, アルブミンの補充にもかかわらず総蛋白3.7g/dl, アルブミン1.9g/dlと低蛋白血症と低アルブミン血症が持続し, 胸水・腹水も減少しなかった. 消化管シンチにて蛋白の消化管内への漏出を認め, 蛋白漏出性胃腸症を合併した僧帽弁閉鎖不全兼三尖弁閉鎖不全症の診断で手術を施行した. 手術は両弁とも形成術を施行し, 術後II度の三尖弁逆流が残ったが, 中心静脈圧は低下し腸管への蛋白漏出は改善し腹水も消失した. 三尖弁閉鎖不全症に伴う蛋白漏出性胃腸症の報告は少なく, 報告した.
  • 黄 義浩, 大久保 正, 星野 良平, 神垣 佳幸
    2001 年 30 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    結合組織代謝異常症を伴う慢性A型解離性大動脈瘤3症例に対して, 一期的に Bentall 変法+上行弓部大動脈置換術を施行した. 症例は男性2人, 女性1人で, 年齢は37~48歳, Marfan 症候群が2例, cystic medial necrosis が1例であった. 全例大動脈弁輪拡張症 (AAE) と高度な大動脈弁閉鎖不全症 (AR) を有し, 大動脈基部および弓部の著明な拡大と広範な解離病変を認めた. とくに結合組織代謝異常を伴う解離性大動脈瘤では, 血管病変が広範で進行性であることが多く, 術後に新たな血管病変や弁疾患をきたす可能性も高いため, 早期拡大手術の考慮, 再手術の可能性をふまえた術式選択とともに術後の慎重な経過観察が重要であると思われる.
  • 水野 朝敏, 黒澤 博身, 小柳 勝司, 青木 功雄
    2001 年 30 巻 1 号 p. 55-57
    発行日: 2001/01/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は19歳の女性. 6歳のとき, 大動脈縮窄症, 圧較差40mmHgと診断, 以後経過観察されていた. 今回, 手術適応の再検討のため紹介された. 左右上肢血圧差20mmHg, 右上肢下肢血圧差40mmHgを認めた. カテーテル検査では左総頸動脈より末梢の遠位大動脈弓~下行大動脈間に多房性 saccular type の瘤を認め, また瘤と下行大動脈間に縮窄部を認めた. 手術所見: 多房性 saccular type の瘤を認め, 瘤壁はきわめて薄く, 瘤内の血流は透視可能で, きわめて破裂の危険の高い症例であった. また内膜の肥厚と菲薄化を認め, 瘤と下行大動脈間に縮窄部を認めた. 直径16mmの人工血管を用いて, 遠位大動脈弓~胸部下行大動脈間を再建し, さらに8mmの人工血管を用いて左鎖骨下動脈を再建した. 本症の自然経過では, 瘤破裂が認められ, 放置すれば予後不良な疾患であり, 積極的な外科治療が必要と考えられた.
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