抄録
Extended retroperitoneal approach による腹部大動脈瘤手術159例を対象に手術成績を検討した. 男性132例, 女性27例, 平均年齢69.3歳. 手術は tube graft 67例, 骨盤内Y-graft 67例, 末梢側吻合を大腿動脈としたY-graft 25例であった. 手術死亡 (30日以内)は2例 (1.3%) で, 下肢血流障害によるMNMSにより死亡. 病院死亡は2例 (1.3%) で, 術前より複数の合併疾患を有し手術適応に問題のあった high risk 症例であった. 術後合併症として血流障害13例, 消化器11例, 創9例, 肺7例, 心6例, 脳4例などを認めた. 術後透析導入例は認めず. 術後経口摂取開始は平均2.7日, 生存例の術後入院期間は平均16.9日. 無輸血率は64%であった. 本法による手術では, 経口摂取開始が早く全身状態の回復が早い, 輸血量が少ない, 入院期間が短いなどの利点がある. 本法の成績は良好で, 高齢者や high risk 症例に対する手術適応拡大のためにも有用な術式である.