症例は63歳男性. 突然の意識消失発作にて発症し, 駿河台日本大学病院救命センターに搬送された. 搬送時, 意識レベルはJCS200pで心拍数66回/分, 血圧は測定不能であった. 胸部CT上, 真性下行胸部大動脈瘤に合併した Stanford A型大動脈解離を認めたが, 偽腔はすでに血栓閉塞しており, 心タンポナーデなどの合併症はなく保存的治療を行い, 精査加療目的で当科へ紹介・転入院した. 転院時, 意識は清明で四肢麻痺は認めず, 胸部理学的所見に異常は認めなかった. 血圧は安定しており, 左右差は認めなかった. 発症第36病日の心臓カテーテル検査では, 左鎖骨下動脈分岐直後に真性大動脈瘤を認めたが, 解離腔は造影されず, ulcer like projection (ULP) は認められなかった. 冠状動脈造影検査では有意な狭窄病変を認め, 発症第49病日に弓部全置換術ならびに冠状動脈バイパス術を施行した. 術後, 神経学的異常は認めず, 術後第18病日に退院した. 術後14カ月現在, 元気に日常生活を送っている.