日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
Print ISSN : 0285-1474
ISSN-L : 0285-1474
30 巻, 2 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 割石 精一郎, 金光 尚樹, 天白 宏典, 岡部 学, 中村 隆澄
    2001 年 30 巻 2 号 p. 59-62
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1997年1月から1999年12月の間に経験した大動脈弁疾患の手術症例52例のうち, 術中の大動脈弁所見から先天性二尖弁が確認された症例は, 24例 (46.2%) であった. 狭窄病変を主体とした症例が多数を占めた. 右冠尖左冠尖型は15例, 前尖後尖型は9例であった. 22例に大動脈弁置換術, 1例に大動脈基部置換術, 1例に大動脈基部再建術を施行した. 心房中隔欠損症合併症例を1例, 心室中隔欠損孔閉鎖術後の再手術症例を1例, 高位背側起始右冠動脈症例を1例, 感染性心内膜炎による菌塊付着症例を2例経験した. 狭窄病変を呈した症例では, 全例に交連部, 弁輪部から弁尖にいたる石灰化が著明であり, 病変の強度なものが多かった. 多くは狭小弁輪を有し, 強い狭窄後上行大動脈拡張をきたしていた. 全例, 術後経過は良好で, 現在, 外来にて経過観察中である. 先天性大動脈二尖弁に続発した大動脈弁手術には, 術前, 術中のとくに慎重な大動脈弁, 大動脈弁輪, 大動脈の評価, および合併異常の評価が必要であると考えられた.
  • 佐々木 康之, 磯部 文隆, 衣笠 誠二, 島村 吉衛, 熊野 浩, 長町 恵磨, 加藤 泰之, 有元 秀樹
    2001 年 30 巻 2 号 p. 63-67
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    待機的腹部大動脈瘤 (AAA) 症例に対する術前冠動脈造影 (CAG) と冠血行再建術の有用性を検討した. 1995年1月から1999年11月までの待機的AAA手術53例に術前 routine CAG施行したところ, 23例 (43%) に有意冠動脈狭窄を認め, さらに無症候性心筋虚血を10例 (19%) に認めた. 冠動脈狭窄を有するものには, 負荷心筋シンチを行い, 術前冠血行再建の適応を判断した. 虚血性心疾患合併例の12例に対してCABG 4例, PTCA 8例の術前冠血行再建を施行した. CABGとPTCAによる死亡はなかった. AAA手術死亡を1例 (2%) のみに認め, 原因は腸閉塞より多臓器不全合併による死亡であった. その他, CADに起因する合併症はみられなかった. 以上のことより, 待機的AAA症例では全例にCAGを施行し, 周術期心筋梗塞の合併が危惧される症例には術前冠血行再建を施行することが, 重要であると考えられた.
  • 末永 悦郎, 伊藤 翼, 須田 久雄, 池田 和幸
    2001 年 30 巻 2 号 p. 68-70
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    感染性腹部大動脈瘤は腹部大動脈瘤の3%にあるといわれるが, その早期診断はしばしば困難で術後の病理診断によるところが多い. 今回われわれは動脈径の拡張を認めず周囲に膿瘍形成を伴った急性期感染性腹部大動脈瘤の1症例を経験し解剖学的血行再建術を施行し良好な結果を得たので報告する. 症例は59歳男性, 発熱と腹痛を主訴に近医入院し腹膜炎を疑われ抗生剤の点滴にて治療中であった. 経過中CTにて腹部大動脈周囲に膿瘍を認め腹痛が増強するため当科紹介入院となった. 造影CT所見では腹部大動脈周囲に low density area を認め大動脈壁は不整で一部造影剤の突出像を認め感染性腹部大動脈瘤の切迫破裂と診断し同日, ただちに緊急手術を施行した. 再建は人工血管を用い解剖学的に行った. 術中迅速細菌検査にて採取した膿汁よりサルモネラ菌が検出された. 術後強力な抗生剤による治療で経過は良好であった.
  • 中尾 佳永, 上田 敏彦, 茂呂 勝美, 尾本 正, 井上 仁人, 長 泰則, 川田 志明
    2001 年 30 巻 2 号 p. 71-73
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    肋間動脈瘤は比較的希な疾患で, その成因は先天性, 外傷性, 真菌性などが報告されている. これまでは破裂して初めて診断される症例が多かったが, 近年では健康診断や, CT, MRIにより診断されることも少なくない. 位置的に後縦隔腫瘍との鑑別が必要となり, 縦隔腫瘍と診断され手術施行にいたる症例もある. 症例は68歳男性で, 胸部X線写真で異常陰影を指摘された. CT, MRI, 大動脈造影の精査により, 動脈瘤の可能性が示唆された. 手術所見より下行大動脈に隣接する肋間動脈瘤が最も考えられたため, 部分体外循環下に手術を施行した. 解剖学的位置関係および病理学的所見より, 血栓閉塞した粥状硬化性の真性肋間動脈瘤と診断された.
  • 福田 幸人, 伊藤 篤志, 大坂 基男, 佐々木 昭暢, 山下 洋一, 木川 幾太郎, 鰐渕 康彦
    2001 年 30 巻 2 号 p. 74-76
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は73歳男性. 主訴は労作時胸痛. 血管造影にて左右鎖骨下動脈, 左椎骨動脈に狭窄を有する冠状動脈3枝病変と診断. 上行大動脈にも著明な石灰化を有するため, 通常の大動脈遮断下の冠状動脈バイパス手術は, 脳合併症の危険性が高いため回旋枝領域の病変には術後カテーテル・インターベンションを行うことを前提として拍動下冠状動脈バイパス手術を施行した. 手術は左鎖骨下動脈に狭窄があるため左内胸動脈が使用できず, 右胃大網動脈にてLADに, 大伏在静脈を用い4PDにバイパスを置き大伏在静脈の中枢側は右腕頭動脈に吻合した. 術後造影と同日に回旋枝にステントを留置し良好に退院した. 体外循環が予後に影響を与える可能性がある場合, インターベンションを前提とするバイパス手術は有効な方法の一つと考える.
  • 新野 哲也, 塩野 元美, 折目 由紀彦, 八木 進也, 山本 知則, 木村 俊一, 秦 光賢, 長 伸介, 根岸 七雄, 瀬在 幸安
    2001 年 30 巻 2 号 p. 77-79
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性. 突然の意識消失発作にて発症し, 駿河台日本大学病院救命センターに搬送された. 搬送時, 意識レベルはJCS200pで心拍数66回/分, 血圧は測定不能であった. 胸部CT上, 真性下行胸部大動脈瘤に合併した Stanford A型大動脈解離を認めたが, 偽腔はすでに血栓閉塞しており, 心タンポナーデなどの合併症はなく保存的治療を行い, 精査加療目的で当科へ紹介・転入院した. 転院時, 意識は清明で四肢麻痺は認めず, 胸部理学的所見に異常は認めなかった. 血圧は安定しており, 左右差は認めなかった. 発症第36病日の心臓カテーテル検査では, 左鎖骨下動脈分岐直後に真性大動脈瘤を認めたが, 解離腔は造影されず, ulcer like projection (ULP) は認められなかった. 冠状動脈造影検査では有意な狭窄病変を認め, 発症第49病日に弓部全置換術ならびに冠状動脈バイパス術を施行した. 術後, 神経学的異常は認めず, 術後第18病日に退院した. 術後14カ月現在, 元気に日常生活を送っている.
  • 水野 朝敏, 堀越 茂樹, 江本 秀斗, 宇野 吉雅, 鈴木 博之
    2001 年 30 巻 2 号 p. 80-82
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は21歳の男性, 心房中隔欠損症と診断され入院した. 心雑音, 心エコー所見, 心臓カテーテル検査所見より下縁欠損型心房中隔欠損症と診断し手術を施行したが, 手術中に coronary sinus ASDと確定診断した. 術前 coronary sinus ASDを確定診断することは難しいが, 本症例は1) 心エコー検査にて, subcostal view からの四腔断面像で欠損孔は認めず, hepatoclavicular position からの四腔断面像のみで短絡血流を確認でき, さらに coronary sinus の拡大も認めていたこと, 2) カテーテル検査にて心房中隔中央部に欠損孔を確認できず, それより尾側でカテーテルが左房へ通過したなど術前より coronary sinus ASDを示唆する所見が得られていた. 本症を疑い, より詳細な観察を行うことで術前診断は可能と考えられた. また欠損孔閉鎖には coronary vein からの血流を妨げないこと, 欠損孔の上前縁部で房室結節の損傷を避けることに注意が必要であった.
  • 小泉 淳一, 菊池 洋一, 櫻田 卓, 草島 勝之
    2001 年 30 巻 2 号 p. 83-85
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は74歳, 女性. 難治性の高血圧, 上下肢圧較差, うっ血性心不全と腎不全を認め当院へ紹介され入院した. 大動脈造影検査にて下行胸部大動脈のほぼ中央部に90%狭窄を認め, 下行胸部大動脈縮窄の診断でF-F部分体外循環下に下行胸部大動脈バイパス術を施行した. 術後経過は良好で, 術後28日目に退院した. 病変部大動脈壁の病理組織学的検査では中膜から内膜にかけての著明な肥厚を認め線維筋性異形成による下行胸部大動脈縮窄と診断された.
  • axillo-coronary bypass の1例
    阿部 毅寿, 川田 哲嗣, 亀田 陽一, 多林 伸起, 上田 高士, 西崎 和彦, 内藤 洋, 谷口 繁樹
    2001 年 30 巻 2 号 p. 86-88
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例: 77歳, 男性. 15年前に3CABG (SVG-LAD, SVG-RCA, SVG-OM) が施行された. その後SVG-RCAとSVG-OMの閉塞による狭心症が再発し, 3年前に再CABG (LITA-OM, RGEA-RCA) が施行された. このときLADへのSVGには graft disease は認められなかった. 6カ月前より狭心症が出現し, 冠状動脈造影の結果LADへのSVGの graft disease が認められた. その後, 患者は不安定狭心症に陥ったため, 左鎖骨下小切開と左前胸部小開胸によるSVGを用いた心拍動下, 左腋窩動脈-冠状動脈 (LAD) バイパス術が行われた. 術後, 狭心症は消失し, グラフト造影でも良好なグラフトの開存が確認された. 再々CABGを必要とした症例でSVGを用い, inflow を左腋窩動脈に求めた axillo-coronary bypass を, MIDCABを応用した術式で行い, 有用であったので報告する.
  • 坂口 昌幸, 藤井 尚文, 西村 和典, 柳谷 信之
    2001 年 30 巻 2 号 p. 89-91
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は18歳男性で, 交通事故受傷後当院に搬送された. 来院時血圧71/30mmHgでショック状態であった. 胸部X線で上縦隔の拡大と大動脈弓の不明瞭化を認め, 胸腹部CTで左血胸, 近位下行大動脈に仮性動脈瘤の形成, 頸部-縦隔-後腹膜腔に大量の血腫を認めた. 受傷2時間後に部分体外循環下に下行大動脈人工血管置換術を施行した. 下行大動脈はほとんど離断した状態であり, かろうじて壁側胸膜によって保持されていた. 術後経過は良好であった. 外傷性胸部下行大動脈破裂においては, 速やかな下行大動脈の止血・再建が必要と思われた. また診断, 治療方針の決定には, ヘリカルCTが有用であった.
  • 水野 友裕, 外山 雅章, 田渕 典之, 栗生 和幸, 加藤 全功
    2001 年 30 巻 2 号 p. 92-94
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤に交叉性異所性癒合腎を合併した非常に希な症例を経験したので報告する. 症例は74歳, 男性. 他疾患に対する精査で左腎動脈下の腹部大動脈瘤, 両側総腸骨動脈瘤を指摘され, 手術適応と判断された. さらに右腎はなく, 交叉性異所性癒合腎と診断された. 術前血管造影では, 異所性腎への血流は腹部大動脈瘤から1本と, 右総腸骨動脈から1本の計2本が確認された. 手術所見では, 左腎動脈直下から動脈瘤変化が認められ, 奇形腎動脈は術前に確認されていた2本以外に瘤中央右側壁から径1mm程の細い動脈の計3本が流入していた. 人工血管置換にさいして, 腎保護のため奇形腎動脈へ冷却リンゲル液を灌流しつつ, 上下2本の腎動脈を再建した. 異所性腎虚血時間45分で術後腎障害はみられなかった. このような症例では, 奇形腎動脈は多様であり, 適切な腎保護下に再建することが重要と考えられた.
  • 針谷 明房, 山口 敦司, 安達 秀雄, 村田 聖一郎, 岡田 昌彦, 井野 隆史
    2001 年 30 巻 2 号 p. 95-98
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は他施設で1979年に腹部大動脈瘤に対してY型 Cooley double velour knitted Dacron グラフトを用いて手術を受けた. 術後約18年後に腎動脈下の最大径約8cm大の人工血管瘤と左側は最大径約10cmを超える巨大な両側内腸骨動脈瘤が認められた. また, 心臓カテーテル検査の結果, 重症3枝冠動脈病変が認められたため同時手術を行った. 術中所見では中枢側吻合部から離れた部位の人工血管胴体部分の左側前方が縦方向に断裂し仮性動脈瘤を形成していた. 4枝冠動脈バイパス術と再Yグラフト人工血管置換術を施行した. グラフトの断裂の原因としては人工血管自体の繊維の材質劣化によるものが疑われた. 遠隔期の Dacron 人工血管非吻合部仮性動脈瘤の報告は少なく, 希なため報告する.
  • 北野 育郎, 脇田 昇, 坂田 雅宏, 南 裕也, 川西 雄二郎
    2001 年 30 巻 2 号 p. 99-102
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は, 72歳の男性. 主訴は, 意識消失発作にて近医を受診. 症状軽快後に胸部CTが施行され, 大動脈遠位弓部に瘤状拡大が認められた. 遠位弓部の大動脈瘤は嚢状で, CT上最大径は55mmであった. また, 冠状動脈造影検査では左前下行枝#6が完全閉塞しており, 左室造影にて梗塞後左室瘤が認められた. 左室の拡張末期容積は285ml, 収縮末期容積は224mlと拡張し, 左室駆出分画も21%と著明に低下していた. 遠位弓部大動脈瘤に対しては全弓部置換術を, また術後の心不全の発症を考慮して, 左室瘤に対して左室縮小形成術いわゆる Dor 手術を同時に施行した. 術後の経過は良好で, 拡張末期容積が241ml, 収縮末期容積147mlと縮小し, 左室駆出分画も39%と左室機能の改善が認められた. 本邦では, 胸部大動脈瘤に, 左室瘤を合併した症例に対する同時手術の報告例はなく, 左室縮小形成術の適応も含め報告する.
  • 月岡 俊英, 山本 信一郎, 安田 保
    2001 年 30 巻 2 号 p. 103-105
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は81歳, 男性. 右下腿外側虚血性潰瘍に対し, 近医にて左総大腿動脈-右膝窩動脈交叉バイパス術が施行された. 2カ月後よりグラフト感染を認め当科を紹介された. 細菌培養では Staphylococcus aureus (MSSA) が検出された. 手術は8mm, Bionit を用い大腿外側を通した右腋窩-膝窩動脈バイパス術を施行, 感染人工血管を除去した. 鼠径部の人工血管感染に対して, 大腿外側を通した腋窩-膝窩動脈バイパスにより肢切断を回避でき良好な結果を得られた.
  • 久貝 忠男, 知花 幹雄
    2001 年 30 巻 2 号 p. 106-109
    発行日: 2001/03/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は52歳, 男性. 平成11年5月10日にAMIを発症し, 4日後梗塞後不安定狭心症となった. 冠動脈病変はLMTを含む3枝病変であった. また, Leriche 症候群を合併しており, 両下肢の血行は太く発達した両側ITAで灌流されていた. Yグラフトによる腹部大動脈の再建および両側ITAと右胃大網動脈によるCABGを同時に行い, 良好な結果を得た. ITAが下肢の主要側副血行路となっている Leriche 症候群を合併した不安定狭心症に対しては, IABPの使用の可能性, 虚血下肢への血行再建を考慮して同時手術が望ましい.
feedback
Top