抄録
症例は71歳, 女性. 突然の腹痛にて来院した. 臨床症状およびCTより腎動脈上腹部大動脈瘤の切迫破裂と診断し, 緊急手術を行った. 手術は部分体外循環下に分節的遮断法を用いて, 腹部主要分枝再建を伴う人工血管置換術を施行した. 対麻痺などの合併症もなく, 術後経過は良好であった. 病理組織学的に動脈硬化性変化が著明で, 瘤壁は3層構造を欠き, 線維性結合組織の増生を認めた. また, 連続した内中膜層が瘤内に内翻しており, 動脈瘤の成因として penetrating atherosclerotic ulcer (PAU) が考えられた.