目的:日本老年歯科医学会では,2016年に口腔機能低下症を定義した。本研究の目的は,地域歯科診療所受診者における口腔機能低下症の罹患率と各項目の低下の実態を調査することである。
方法:地域歯科診療所(東京都)外来患者で,口腔機能検査を実施した成人189名(男性83名,女性106名,平均年齢51±16歳)を対象とした。口腔不潔は舌背の総微生物数,口腔乾燥は舌背湿潤度,咬合力低下は残存歯数,舌口唇運動機能低下はオーラルディアドコキネシス,低舌圧は最大舌圧,咀嚼機能低下はグルコース溶出量によった。嚥下機能低下はEAT-10を実施していないため,基本チェックリストを用いた。分析は,各項目の該当率と口腔機能低下症の罹患率を算出した。
結果と考察:該当項目別には,口腔不潔90.5%,口腔乾燥70.9%,咬合力低下13.2%,舌口唇運動機能低下56.6%,低舌圧21.2%,咀嚼機能低下7.9%,嚥下機能低下0%であった。患者ごとの該当項目数は,6項目2.6%,5項目5.3%,4項目9.0%,3項目32.3%,2項目35.4%,1項目14.8%,0項目0.5%であり,49.2%が口腔機能低下症と診断された。また,口腔機能低下症の罹患率は,年齢群が上がるにつれて増加することが明らかとなった。
本研究結果より,地域歯科診療所受診者においては約半数が口腔機能低下症と診断され,高齢期以前から口腔機能が複合的に低下していることが判明した。