日本心臓血管外科学会雑誌
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30 巻, 4 号
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  • gap 結合の関与について
    中井 康成, 堀本 仁士, 下村 裕章, 林 哲也, 北浦 泰, 近藤 敬一郎, 麻田 邦夫, 佐々木 進次郎
    2001 年 30 巻 4 号 p. 165-170
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    高齢心筋の虚血耐性および ischemic preconditioning (IPC) の効果を成熟心筋と比較検討した. 高齢 (≥135週齢), 成熟 (15~20週齢) 家兎摘出心を Langendorff 灌流し, 成熟心筋無処置群 (A群), 成熟心筋IPC (B群), 高齢心筋無処置群 (C群), 高齢心筋IPC群 (D群), 成熟心筋 gap 結合阻害剤投与群 (E群) に分けた. IPCは5分間の全虚血と再灌流を2回行い, E群は左冠動脈前下行枝 (LAD) 遮断前に heptanol 投与を行った. 各群, 60分間のLAD遮断と60分間の再灌流を行った. 梗塞範囲はB, C, E群でA群と比較し有意に減少し, D群はC群と比較し有意な増加を認めた. 電顕的には高齢心筋に gap 結合の減少を示唆する所見が観察された. 以上より, (1)高齢心筋は虚血耐性およびIPCの効果が成熟心筋とは異なり, (2)加齢による gap 結合減少が虚血・再灌流後の梗塞範囲減少へ関与している可能性が示唆された.
  • 向井 省吾, 川上 恭司, 中尾 達也
    2001 年 30 巻 4 号 p. 171-176
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    末期重症心不全に対する左室縮小形成術 (Batista 手術) は, 心移植と並んで重要な治療選択肢の一つである. 本手術を施行した非虚血性心筋症6例について術式や周術期管理を中心に検討した. 年齢は36~73 (平均59.2) 歳であった. 術前NYHA分類III度以上は5例で, 平均LVDdは75mm, EFは29%であった. MR III度以上が5例, TRが3例であった. 手術は体外循環心拍動下に行い, 左室自由壁の菲薄部を中心に切除した. 合併手術はMVRが4例, MVPが1例, TAPが3例, AVRが1例であった. 生存は4例で, 術後4週間目でのNYHA分類は3例がII度以下に改善した. 病院死亡は2例であった. 手術の基本は, 重篤な左室拡張障害の回避と残存MRの防止である. 本術式は, 内科的治療と心移植との間隙を埋める治療法として重要な選択肢となりうる.
  • 米須 功, 有永 康一, 中島 淳博, 戸嶋 良博, 木村 聡, 石原 健次, 川内 義人
    2001 年 30 巻 4 号 p. 177-181
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    胸部大血管手術を術後QOLを中心に検討した. 1994年8月から1999年6月までの連続した胸部・胸腹部大血管手術93例を対象とした. 遠隔期QOLは麻野井の方法に基づき, その結果を70歳未満群, 70歳以上群に分け比較検討した. アンケートの回収率は95.7%, 術後平均観察期間は23.1カ月であった. 男性65例, 女性28例, 平均年齢63.8 (26~84) 歳. 待機手術45例, 緊急手術48例. 病院死亡は13例 (14%) で, 遠隔期死亡は10例 (5.6%/P-Y (Patients-Years)) であった. Kaplan-Meier 法で求めた生存率は, 70歳以上群は70歳未満群より有意に低かった. 周術期脳梗塞合併症例は, 入院中および遠隔期に高率に死亡し, 生存例も麻痺を残す症例では著しくQOLが低下していた. 運動能力 (METS) は, 70歳以上群が70歳未満群より有意に高かった. 手術に対する満足度, 元気度とも88%以上の患者から術前と「変わらない」以上の回答を得た. これより, 70歳以上高齢者でも術中脳梗塞を起こさず周術期を乗り越えれば遠隔期には良好なQOLが得られることがわかった.
  • 福村 好晃, 坂東 正章, 下江 安司, 片山 和久, 吉田 誉, 片岡 善彦
    2001 年 30 巻 4 号 p. 182-186
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    1986年から現在までに134例の急性大動脈解離症例を経験したが, そのうち10例が臓器虚血を合併したA型解離症例であった. 年齢は53~78 (平均64.6) 歳, 男女比は6:4. 虚血臓器は脳3例, 心臓1例, 腸管5例, 腎臓2例, 四肢7例で, 5例に複数臓器虚血を認めた. 手術前死亡1例, 開胸後破裂死1例を除く8例に手術を施行した. 手術はSMAバイパス1例, 右冠動脈ステント留置後第19病日大動脈修復1例, 急性期の大動脈修復6例である. 死亡率は脳虚血 (2/3), 腸管虚血 (4/5), 腎虚血 (2/2), 複数臓器虚血例 (4/5) で高く, 全体で50% (5/10) であった. また入院時の Base Excess (B.E.) 値が-10mLEq/l以下の症例は全例 (4/4) 死亡した. 救命率向上のためには, 症例に応じた治療方針の選択が必要で, 大動脈修復と経皮的インターベンションなど低侵襲の虚血解除策との組み合わせが必要である. また, その治療方針決定や予後の予測にB.E. 値が簡便で有用と思われた.
  • 松田 宙, 榊原 哲夫, 阪越 信雄, 高野 弘志
    2001 年 30 巻 4 号 p. 187-189
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性, 腹部大動脈瘤破裂の診断で人工血管置換術施行し, 術後経過はおおむね良好で第23病日に退院となったが, 退院後第26病日に熱発を認めた. 腹部CTにて後腹膜膿瘍を指摘され, 再入院となった. 後腹膜膿瘍をエコー下に穿刺ドレナージし, 膿瘍腔を造影したところグラフトの感染が疑われたため, 翌日洗浄ドレナージ術を行った. 人工血管周囲全体にも膿瘍が及んでいたため人工血管周囲に洗浄用チューブを留置した. 術後, 強酸性水, 0.5%イソジン入生理食塩水で持続洗浄し, 抗生剤投与を行った. その結果炎症所見は次第に消失し第88病日に退院となった. 人工血管感染に対し持続洗浄ドレナージおよび抗生剤長期投与により治癒した1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
  • 佐伯 直純, 石丸 新, 市橋 弘章, 島崎 太郎, 小櫃 由樹生, 石川 幹夫
    2001 年 30 巻 4 号 p. 190-192
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は71歳, 女性. 突然の腹痛にて来院した. 臨床症状およびCTより腎動脈上腹部大動脈瘤の切迫破裂と診断し, 緊急手術を行った. 手術は部分体外循環下に分節的遮断法を用いて, 腹部主要分枝再建を伴う人工血管置換術を施行した. 対麻痺などの合併症もなく, 術後経過は良好であった. 病理組織学的に動脈硬化性変化が著明で, 瘤壁は3層構造を欠き, 線維性結合組織の増生を認めた. また, 連続した内中膜層が瘤内に内翻しており, 動脈瘤の成因として penetrating atherosclerotic ulcer (PAU) が考えられた.
  • 矢野 浩己, 工藤 龍彦, 小長井 直樹, 前田 光徳, 三坂 昌温, 松本 正隆, 石丸 新
    2001 年 30 巻 4 号 p. 193-196
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は32歳男性. 主訴は労作時の息切れと感冒様症状. 胸部CTで縦隔リンパ節腫大, 心膜肥厚, 胸水を認めた. 喀痰, 胸水の抗酸菌培養陰性, アデノシンデアミナーゼ (ADA) 活性正常, ツ反は20×15mm, ウイルス抗体価 (コクサッキーA9, エコー3, インフルエンザB) は陰性であった. 入院後10日目頃より発熱, 心不全症状を呈し, 心臓カテーテル検査で右心室の dip and plateau 波形を認めた. 手術は胸骨正中切開とし, 両側横隔神経間の著明に肥厚した心膜亜全摘術を施行した. 心膜の病理組織診断にてラ氏型巨細胞と乾酪壊死巣を認め結核性と診断した. 術後は, 一過性の胸水貯留を認めたものの良好であり, 退院後も症状の再燃を認めていない.
  • 中西 浩之, 大庭 治, 七条 健, 中井 幹三, 柚木 継二
    2001 年 30 巻 4 号 p. 197-199
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    両側内腸骨動脈瘤を合併した腹部大動脈瘤の外科治療に対して, 術中経肛門的直腸内超音波検査を施行し, 両側内腸骨動脈瘤空置術を決定した. 症例は72歳, 男性. 術前CTで, 腎動脈下に腹部大動脈瘤を認め, 両側総腸骨動脈瘤, 両側内腸骨動脈瘤を合併していた. 右内腸骨動脈瘤は血栓閉塞. 術中, 経肛門的直腸内超音波検査にて, 左総腸骨動脈遮断下の上直腸動脈流速は遮断前後で変化せず, 腎動脈下腹部大動脈遮断で流速は低下したが, flow pattern は保たれていた. 腸管虚血は生じないと判断し, 両側内腸骨動脈瘤空置, 人工血管置換術を施行した. 術後は Tonometer でS状結腸粘膜内pHを測定した. 術後25時間でpHは正常化した. 術後経過は良好であった. 術中経肛門的直腸内超音波検査および Tonometer は両側内腸骨動脈瘤を合併した腹部大動脈瘤術式の決定や術後の経過観察に有用であった.
  • 真鍋 隆宏, 市川 由紀夫, 井元 清隆, 戸部 道雄, 山崎 一也, 矢野 善己, 伊達 康一郎, 近藤 治郎, 高梨 吉則
    2001 年 30 巻 4 号 p. 200-202
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は61歳, 女性. 腹痛と腰痛を主訴に来院. 炎症性腹部大動脈瘤の診断にて, 瘤切除人工血管置換術を施行した. 術後1カ月後に下血と吐血を生じ, 出血性ショックに陥ったため緊急手術を行った. グラフトの遠位吻合部と十二指腸水平脚の間に瘻孔を認め, 大動脈十二指腸瘻と診断した. 止血, 瘻閉鎖, 大網充填, 胃空腸吻合, Braun 吻合を施行した. さらに1カ月後, 大動脈十二指腸瘻の再発をきたしたが, 人工血管除去, 十二指腸後壁縫合閉鎖, 腋窩-大腿動脈間バイパスを施行し救命しえた.
  • 内藤 浩之, 呑村 孝之
    2001 年 30 巻 4 号 p. 203-205
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    上肢深部静脈血栓症は下肢のものと比較すると希である. それに合併する肺塞栓症の頻度は下肢深部静脈と同程度かそれ以上といわれている. 今回われわれは, 肺塞栓症を伴った上肢深部静脈血栓症に対し上大静脈フィルターを留置した1例を経験したので報告する. 症例は67歳女性, 左腋窩痛を主訴に発症した. CT, 静脈造影にて, 左上腕静脈より左腕頭静脈にかけて血栓が認められた. 右肺動脈にも血栓の付着があったため, 一時的フィルターを上大静脈に挿入したのち, 血栓溶解療法を行った. その後の肺血流シンチで肺塞栓症が認められたため, Greenfield フィルターを上大静脈に留置した. その後の経過は良好で, 現在は外来で抗凝固療法を行っている.
  • 横瀬 昭豪, 福永 周司, 高瀬谷 徹, 坂下 英樹, 千原 新吾, 平塚 了一, 鬼塚 誠二, 青柳 成明
    2001 年 30 巻 4 号 p. 206-209
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    Shprintzen-Goldberg syndrome (SGS) は, 結合織疾患の一つでさまざまな全身の特徴をもつ疾患である. 臨床的には Marfan syndrome (MFS) 様徴候に頭蓋骨早期癒合, 精神発達遅延を伴うのが特徴である. 報告例はいまだ少ないが, MFSと同様に心血管合併症を認め, これは生命予後を規定する因子の一つと考えられる. われわれの検索しえた範囲では, SGSの報告例は19例であり, そのうち7例 (36.8%) に心血管合併症が認められている. 今回われわれは希な疾患であるSGSに合併した心血管病変に対し, 外科治療2例を経験したので, その手術適応, 術後成績につき報告する.
  • 杉本 努, 高橋 俊樹, 箕輪 隆, 塩野 知志, 大泉 弘幸, 渡辺 隆夫, 島崎 靖久
    2001 年 30 巻 4 号 p. 210-212
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    75歳, 女性の右肺癌 (IA) 合併胸部下行大動脈瘤に対して, 肺癌手術に先行させて局所麻酔下に胸部大動脈瘤に対するステントグラフト内挿術 (Dacron sheet で被覆した自己拡張型の spiral Z stent) を行った. 造影上 endoleak は認めず瘤は消失した. 肺癌合併胸部大動脈瘤では癌の根治性から同時手術が望ましいと考えられるが, 本例のような高齢者右肺癌合併例の場合, 同時手術はもちろん, 二期的手術を選択しても両側開胸に伴う手術リスクの増大が危惧される. ステントグラフト内挿術は呼吸機能低下や手術操作, 全身麻酔, 輸血などに伴う免疫能低下を懸念する必要がなく, 癌進行の点からも有利に早期の二期的肺癌手術を設定することが可能であった.
  • 添田 健, 松田 光彦, 青田 正樹, 洞井 和彦, 島本 健
    2001 年 30 巻 4 号 p. 213-216
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性で夜間や軽い運動時の胸痛があるために本院を受診, エコーで右房内の腫瘤を発見された. 冠動脈造影検査にて異常は認められなかった. 腫瘤が大きいため, 体外循環下, 心停止下に摘出術を施行し, 三尖弁前尖に短茎を有する20×15×13mmの黄色, 球型の腫瘍を摘出した. 術後は合併症もなく退院し順調に経過している. 腫瘍は病理組織学的に乳頭状線維弾性腫と診断された. 同腫瘍は心臓弁に好発する腫瘍としてよく知られ, もともと剖検心において偶然発見されることが多かったが臨床例の報告も増加している. しかし同腫瘍の臨床報告例のほとんどは左心系発生例であり, 腫瘍の大小にかかわらず脳梗塞や心筋梗塞といった重大な合併症をきたしうるために手術適応は明確であるが, 右心系に関しては報告例もごく少なく手術適応も明らかではない. 本例と検索しえた内外の右心系発生の報告例合わせて18例を基に手術適応に関して検討を加えたので報告する.
  • 岩橋 英彦, 田代 忠, 中村 克彦, 財津 龍二, 本村 禎, 村井 映, 立川 裕, 古賀 敏, 岩隈 昭夫, 木村 道生
    2001 年 30 巻 4 号 p. 217-219
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は47歳男性, 労作性狭心症の診断にて, 手術の目的で当科に入院した. 冠動脈造影にて左回旋枝 (Cx) #11に75%, 右冠動脈 (RCA) #1-3に完全閉塞を認めたので, 冠動脈バイパス術 (CABG) を行った. 手術は人工心肺を使用し, 心停止下に左内胸動脈 (LITA) をCx#12 (OM2) に吻合し, 右胃大網動脈 (RGEA) をRCA#4PDに吻合した. 吻合直後に赤外線カメラ (IRIS-III) にてグラフトを術中撮影したところ, RGEA-#4PDの血流は撮影されたが, LITA-OM2は, 血流を確認できなかったため, 吻合部の閉塞と判断し同部位に再吻合を行った. 再びIRIS-IIIによる術中撮影を行い, 吻合部から末梢への血流が確認できたため, 手術を終了した. 術後経過は良好であり, 術後の確認造影でバイパスはすべて開存していた. CABGの術中に心筋温と血液温とに0.1℃の温度差があれば, IRIS-IIIは造影剤なしで血流画像を得ることができ, 術中に再吻合の要否の判定に有用であった.
  • 長沼 宏邦, 益子 健男, 田中 圭
    2001 年 30 巻 4 号 p. 220-222
    発行日: 2001/07/15
    公開日: 2009/04/28
    ジャーナル フリー
    症例は64歳男性, 1998年8月に特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) とCT上最大径85mmの腎動脈下腹部大動脈瘤を指摘され手術を勧められたが放置していた. 1999年8月腹痛で来院しCTで左後腹膜血腫と瘤からの造影剤の leakage を認め, 腹部大動脈瘤切迫破裂と診断された. 来院時ショック状態は認めなかったことと, 血小板数が2.5×104/mm3であったためまずは降圧療法を開始し, 2日間γ-グロブリン大量療法と血小板輸血を行ったのち, 人工血管置換術を施行した. 術当日朝の血小板数は6.1×104/mm3まで上昇し術中, 術後とも出血で難渋することなく経過した.
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