抄録
急性解離性大動脈瘤の断端形成に, 外膜を真腔に折り返す adventitial inversion technique を用いた2症例を経験した. 症例は65歳女性と74歳女性, いずれも Stanford A型急性解離性大動脈瘤の診断で緊急手術となった. 通常どおり体外循環を確立後, 亀裂部位から距離をおき内膜を横切, 外膜は内膜切離断端より10mm長く残るように横切した. 解離腔にGRF glue を注入し外膜を真腔に折り返し, 5-0 Polypropylene による連続 mattress 縫合で断端形成を行い人工血管に吻合した. 2症例とも出血などの吻合部合併症はなく軽快退院した. 本法はテフロンフェルトなどを用いない自家組織のみによる断端形成法である. 解離部分の外膜を利用しているが強度は十分にあり, また, 人工血管との接着性にも優れ, 出血や感染などの合併症を防ぐうえで有用な手段である.