抄録
1次口欠損は2次口欠損より幼少時より重篤な心不全に陥ることが多いため,早期の手術治療なしでの長期生存例は少ない.われわれは今回,63歳,男性の1次口欠損型不完全型心内膜床欠損症(ECD)に根治術を施行し,良好な結果を得たので報告する.左室造影像で心室レベルでの左右短絡が認められたため,完全型心内膜床欠損症(Rastelli type A)の診断で手術となった.術中所見では心室間の交通はみつからず,不完全型ECDであった.ECDにおいては,左室造影像における心室レベルでの短絡を過大評価してしまう危険性があり,術前診断における心エコー検査の有用性が再認識された.手術は1次口のパッチ閉鎖とKay法による僧帽弁輪縫縮術を施行した.術後経過は良好で,心胸郭比の正常化,臨床症状の改善が認められた.