抄録
われわれは,すでにTNF-α産生阻害剤でp38 mitogen-activated protein kinase阻害剤でもあるFR-167653(Fujisawa Pharm. Co., Ltd., Osaka)によって,ラットinterposition vein graftモデルにおける術後内膜肥厚が抑制される可能性を報告した.今回,FR-167653の投与時期および投与量を変えて比較検討し,術後内膜肥厚を抑制する作用機序について考察した.顕微鏡手術下にLewisラット(雄,484±5g)の総大腿動脈に腹壁静脈グラフトを端々吻合した.手術開始直前にFR-167653 2.0μg/gを腹腔内投与した群(単回投与群,n=5),直前および術後2週目に追加投与した群(追加投与群,n=5),4.0μg/gを直前に投与した群(倍量投与群,n=5),同量の生理食塩水を投与した群(コントロール群,n=6)の4群に分け,術後内膜肥厚の程度を比較検討した.術後4週目に腹壁静脈グラフトを採取し,コンピューター画像処理(NIH Image Ver. 1.61)により内膜断面積を測定した.術後内膜肥厚はコントロール群0.43±0.05mm2で,単回投与群0.16±0.06mm2(p<0.01),追加投与群0.25±0.02mm2(p<0.01),倍量投与群0.05±0.02mm2(p<0.001)と,コントロール群に比し有意に抑制された.本研究によって,FR-167653が,ラットinterposition vein graftモデルにおいて術後内膜肥厚を抑制する効果を有することが明らかになった.