日本心臓血管外科学会雑誌
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冠状動脈バイパス手術におけるmethylprednisoloneの全身性炎症反応症候群抑制効果
林 載鳳高畑 修治
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2003 年 32 巻 2 号 p. 79-82

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抄録
Methylprednisolone (MP)の抗炎症作用に注目し,人工心肺を使用する冠状動脈バイパス(CABG)手術における全身性炎症反応症候群(SIRS)抑制効果について検討した.対象は待機的CABG手術を行った33例で,人工心肺開始前にMPを30mg/kg静注した11症例をHD-MP群(high-dose MP群),MPを5mg/kg静注した11症例をLD-MP群(low-dose MP群),MPを使用しなかった11症例をN-MP群(non-MP群)とし,3群間の比較・検討を行った.術後のSIRS継続日数はHD-MP群とLD-MP群はN-MP群に比べて同程度に短く,低用量のMPでもSIRS短縮効果のあることが示された.インターロイキン6,同8(IL-6/IL-8)はHD-MP群とLD-MP群はN-MP群に比べて同程度に低値であり,低用量のMPでも十分なインターロイキン産生抑制効果をもつことが示された.ただし,心機能障害の指標としてのカテコラミン使用の総量,肺機能障害の指標としての挿管日数,肝機能障害の指標としてのGPT/D-Bil値異常の有無,腎機能障害の指標としてのBUN/Cr値の異常などに関しては3群間で有意差を認めず,MPの各種臓器保護作用は明らかでなかった.術後白血球数の最高値は,HD-MP群がN-MP群より高値を示した.人工心肺を使用するCABG手術において,低用量(5mg/kg)のMPの使用は,感染の危険性を増加させることなく,SIRS期間とIL-6,IL-8の産生を抑制することが可能であった.
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