日本心臓血管外科学会雑誌
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上行・弓部大動脈に重度の石灰化を伴った動脈管開存症および大動脈弁狭窄症に対して脳分離体外循環法を用いて手術を行った1例
高橋 昌一大徳 和之福井 康三畠山 正治久我 俊彦一関 一行棟方 護福田 幾夫
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2003 年 32 巻 4 号 p. 250-252

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抄録

大動脈二尖弁による大動脈弁狭窄症と動脈管開存症に加えて,動脈管を中心とした鉛管様大動脈を合併した症例を経験したので報告する.症例は76歳の男性で,大動脈弁狭窄症の診断で紹介となった.大動脈造影でわずかに右心系が造影されるため,心エコーを行ったところ,動脈管開存症の診断を得た.またCT上,上行から弓部大動脈にかけてのみ全周性の重度の石灰化を認めた.ほかの部位には石灰化はほとんど認められなかった.手術は石灰化のため大動脈遮断が不可能であったため,大動脈遮断用バルーンを用いた低体温体外循環と脳分離体外循環を用いて,大動脈弁置換と動脈管閉鎖(経肺動脈)を行った.術後経過は良好であった.先天性の心奇形において,大動脈二尖弁に動脈管開存症を合併する可能性は高く,診断にさいして注意が必要であると考えられた.また成人の動脈管開存症で動脈管を中心とした石灰化が上行大動脈まで達する症例はまれと考えられた.

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