日本心臓血管外科学会雑誌
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末端肥大症に合併した僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術の1例
過去20年の文献的考察を含めての検討
國重 英之村下 十志文大岡 智学加藤 裕貴上久保 康弘安田 慶秀
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2003 年 32 巻 6 号 p. 350-354

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抄録

末端肥大症における心血管系の合併症として心肥大,高血圧などが知られているが,弁膜疾患の報告は希である.末端肥大症に合併した僧帽弁閉鎖不全症に対し弁形成術を行った症例を経験したので,過去20年の文献検索を行い末端肥大症と弁膜疾患の因果関係,外科治療について考察した.症例は62歳,女性.57歳時,顔面四肢の浮腫が出現し近医にて急性心不全と診断された.理学所見,内分泌学的精査から末端肥大症と診断され,脳MRIにて下垂体腫瘍が認められたため,58歳時に下垂体腫瘍摘出術が施行された.そのときの心エコーでは中等度の左室機能低下があるものの弁機能異常は認めなかった.62歳時心雑音を指摘され,心エコーにて僧帽弁後尖逸脱による逆流を認め手術を施行した.後尖の腱索断裂部を切除し同部を縫合後,弁輪形成術を行った.病理所見では著明な粘液様変性を認めるも,酸性ムコ多糖の沈着は認めなかった.過去20年の文献検索から,末端肥大症における弁膜疾患の手術報告例は21例で,僧帽弁,大動脈弁病変が各10例,僧帽弁兼大動脈弁病変が1例であった.僧帽弁病変は全例閉鎖不全症であり腱索断裂によるものが多く,大動脈弁は7例が閉鎖不全症,3例が狭窄症であった.病理所見からは,GH過剰による酸性ムコ多糖類沈着を認める例は少なく,粘液様変性といった非特異的な所見のみであった.僧帽弁手術では,1990年代までは末端肥大症における僧帽弁の脆弱性などを考慮し弁置換術が選択されていたが,最近の報告では,弁形成術が施行されており現在のところ再発の報告はない.

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