2003 年 32 巻 6 号 p. 374-377
症例は53歳の女性.乗用車で停車中の大型トラックに衝突し受傷した.半昏睡の状態で事故発生より30分後当センターへ搬送された.来院時胸部X線撮影で上縦隔の拡大を認め,胸部造影CTにて外傷性大動脈損傷と診断した.しかし,左側脳室内に外傷性の脳出血も併発していたため,降圧療法による全身管理を先行した.受傷後2日目に頭部CTにて脳出血が止血されていることを確認し,受傷後3日目,低体温循環停止下に下行大動脈置換術を施行した.術後脳合併症を起こすことなく救命することができ,術後44日目に独歩退院した.他臓器損傷を伴う場合の外傷性胸部大動脈損傷の手術適応とその時期および手術法について,文献的考察を加え報告する.