日本心臓血管外科学会雑誌
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大動脈解離が及んだ腹部大動脈瘤の手術経験
塚本 三重生折目 由紀彦進藤 正二長 伸介尾花 正裕秋山 謙次塩野 元美根岸 七雄
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2004 年 33 巻 3 号 p. 162-165

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抄録
大動脈解離が及んだ腹部大動脈瘤3例を経験した.3例中2例を腸管壊死により失ったが,このうち1例は解離が腹部大動脈瘤に進展したために破裂した症例で,人工血管の中枢側吻合にさいして開窓術を行わなかったことによる上腸間膜動脈の血流障害が原因と考えられた.もう1例の死亡例は開窓術を行ったのちに人工血管置換術を行ったが,剖検の結果,グラフトの吻合には問題なかったものの,内腸骨動脈の閉塞が原因で下行結腸からS状結腸が壊死に陥り死亡したと判明した.生存例では開窓術ののち,人工血管置換術を施行し経過は良好であった.手術時期は大動脈解離を発症した急性期では血管壁が脆弱であることから,破裂例およびmalperfusionによる虚血症状が認められる症例を除き,発症から1ヵ月の期間をおくことが望ましいと思われる.また慢性期では開窓術の安全性は高く,これを行うべきであり,また急性期であっても可能なかぎり行うべきである.
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