2005 年 34 巻 2 号 p. 137-139
ヘパリンナトリウムの持続点滴により,AST,ALTの上昇を認めた症例にヘパリンを使用した心臓手術を行ったので,術後AST,ALTの変動について報告する.症例は59歳,男性.左内頸動脈狭窄と右脳梗塞の既往があるため,術前抗血小板薬などの中止とともにヘパリンの持続点滴を開始,この後AST,ALTの上昇を認めたが,ヘパリンの中止とともに正常値に復した.症状が悪化するためヘパリンを使用し拍動下に3枝バイパスを行った.術後呼吸,循環動態は安定し,AST,ALTも通常の手術と同様な傾向をとり,とくに異常な高値になることはなく経過した.ヘパリンによるAST,ALTの上昇の原因は不明であるが,術後に上昇しなかったのは,一時的な高用量使用,プロタミンによる中和の関与などの可能性も考えられる.