日本心臓血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1883-4108
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34 巻, 2 号
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  • 和田 直樹, 高橋 幸宏, 安藤 誠, 菊地 利夫, 朴 仁三
    2005 年 34 巻 2 号 p. 83-87
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    チアノーゼ性心疾患に対する最近の同種血非使用開心術について検討した.対象は,1997年1月から2003年10月までの,体重4kg以上Jatene手術8例(A群),Fontan型手術52例(B群),ファロー四徴症を伴う房室中隔欠損症(AVSD with TOF)9例(C群),人工導管を用いたRastelli手術27例(D群),TOF心内修復術108例(E群)であり,同種血非使用達成率,Hctの変化,挿管時間,術後合併症について比較検討した.同種血非使用率は,A群100%(8/8),B群94.2%(49/52),C群89%(8/9),D群85.2%(23/27)で,E群97.2%(105/108)であった.同種血輸血の要因は,体外循環後の吻合部出血と術後のドレーン出血に起因するものが多く,外科医の止血徹底が最も重要と考えられた.無輸血に起因する術後合併症の発生頻度は低く,循環呼吸動態を含めた術後qualityは良好であった.
  • 林 弘樹, 高橋 幸宏, 安藤 誠, 山城 理仁, 長町 恵磨, 菊池 利夫, 加瀬川 均
    2005 年 34 巻 2 号 p. 88-92
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    Rastelli手術およびRoss手術における右室流出路再建術に用いられる弁付き心外導管として当院においては長期にわたって硬化石灰化が生じないと予想されるePTFE 3弁付きDacron導管を1997年より自作し使用してきた.今回これらの中期成績をとくに導管機能のエコーによる評価を中心として検討した.1997年7月より2002年8月までに当院で施行したePTFE 3弁付き導管を用いた右室流出路再建耐術例のうち当院外来にて追跡可能であった30例を対象とした.男女比は16:14.手術時平均年齢は16.4±7.2(3.4~33.4)歳で,手術時平均体重は41.7±13.3(13~64)kgであった.手術内訳はRastelli手術13例,Ross手術9例,Rastelli手術後の再手術8例で,使用した人工血管径の中間値は22(20~26)mmであった.最終外来エコー検査時,全例NYHA 1度であり,全例において弁の可動性を認めた.導管の圧較差は,退院時平均11±5.8mmHgに比し最終外来エコー時には平均13.8±6.5mmHgで有意差を認めなかった.弁逆流の程度は最終外来エコー検査時に退院時と比べて増悪した症例は1例のみで,non~trivial22例,mild7例,moderate1例でありsevere症例は認めなかった.当院で考案したePTFE 3弁付きDacron導管の中期成績は満足すべきものであった.しかし,長期成績に関しては今後の追跡検討が必要である.
  • 杉本 努, 山本 和男, 吉井 新平, 田中 佐登司, 斎藤 典彦, 菊地 千鶴男, 青木 賢治, 桑原 淳, 春谷 重孝
    2005 年 34 巻 2 号 p. 93-97
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    Stanford A型急性大動脈解離における術後大動脈弁閉鎖不全(AR)残存症例について,中枢側解離形態,術前AR評価などを中心に非残存例と比較検討した.大動脈中枢側断端形成術を行い,術前後心エコー検査でARの評価が可能であった38例を対象とした.術後AR II度以上をAR群(n=6),I度以下をno AR群(n=32)とした.両群間に年齢,性差,術前併存症に有意差はなかった.術前ショック状態は50%,18.7%とAR群がより重症の傾向であった.術前心エコー検査によるARは2.25±1.17度,0.69±0.91度(p<0.001)であった.とくに術前AR III度以上はそれぞれ66.7%,0%と有意にAR群で高度であった(p<0.001).術前CT検査のSTJ levelの解離率は0.90±0.20,0.68±0.26と有意差は認めなかったがAR群で解離率が高い傾向であった.上行大動脈にエントリーを認めたものは66.7%,37.5%とAR群でより中枢側の解離例が多かった(p<0.05).今回解析した大動脈中枢側断端形成38例ではII度以上のAR残存例は6例(15.8%)であったが,AR III度以上は3例(7.9%)とほぼ満足のいく結果であった.術前AR III度以上,上行大動脈にエントリーがあるものに,術後AR残存の可能性が高いことが示唆された.
  • AC bypass graftとY-graftの比較
    江崎 二郎, 大仲 玄明, 高橋 信也, 白神 幸太郎, 田村 暢成, 小宮 達彦
    2005 年 34 巻 2 号 p. 98-102
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    1996年8月から2002年12月までに行った単独冠動脈バイパス術のうち,左内胸動脈を左前下行枝に吻合し,橈骨動脈を回旋枝に吻合した162例を対象とした.橈骨動脈を上行大動脈に中枢吻合した135例をAC群,橈骨動脈を左内胸動脈に端側吻合してY-graftとした27例をY群とし,早期および中期成績の比較検討を行った.入院死亡は認めず,術後合併症は脳梗塞を含めて両群間に差を認めなかった.回旋枝への橈骨動脈グラフトの早期開存率は,AC群97.8%,Y群87.1%で有意にY群が不良であり(p=0.017),術後平均21.7±15.8ヵ月の遠隔期開存率はAC群90.9%,Y群36.4%で,有意にY群が不良であった(p=0.0008).AC群において早期に良好に開存していた橈骨動脈グラフトのうち遠隔期に問題を認めた症例はなかったが,Y群において早期に良好に開存していた橈骨動脈グラフトの25吻合のうち3吻合において,遠隔期にstring signとなっていた.橈骨動脈による回旋枝へのバイパスは,左内胸動脈に端側吻合してY-graftとするより,可能なかぎり上行大動脈に中枢吻合すべきであると思われた.
  • 林 載鳳, 季白 雅文, 古川 智邦
    2005 年 34 巻 2 号 p. 103-106
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    冠状動脈バイパス術(CABG)後の心房細動(AF)の成因はいまだ明らかにされていない.われわれは肺静脈の伸展刺激が心房細動発症の誘因になるのではないかと推測し検討を行った.CABG手術施行の134例中,術後にAFを発症した時点でSwan-Ganzカテーテルを挿入できていた症例は39例であった.1)心係数(CI),2)収縮期肺動脈圧(sPA),3)拡張期肺動脈圧(dPA)を経時的に測定し,占有係数=[AF直前値-最小値/最大値-最小値]×100%を求めた.占有係数の分布を調べると,CI,sPA,dPAの占有係数のおのおのの平均値±標準偏差は16±30%,77±36%,76±38%であった.また,AF発症直前のCIが全経過中のCIのなかで最低値を示した症例は39症例中27例69%であり,AF発症直前のsPA,dPAが全経過中のsPA,dPAのなかで最高値を示した症例は,おのおの39症例中26例67%,39症例中25例64%であった.すなわちCABG後にAFを発症した症例の多くは,心係数の低下局面と肺動脈圧の上昇局面で発症していた.われわれはこれらの状況は肺静脈や左房に伸展刺激のかかった状態であることの考察を行い,それらがCABG後のAF発症の誘因である可能性を推測した.
  • 古澤 武彦, 西村 和典, 柳谷 信之
    2005 年 34 巻 2 号 p. 107-110
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    急性肺血栓塞栓症の外科的血栓除去術に20Frのargyle®ソラシックカテーテル(日本シャーウッド株式会社,東京)を使用し.血栓を効果的に除去し救命した1例を経験したので報告した.症例は43歳,女性.整形外科手術後の重症急性肺血栓塞栓症+心内浮遊血栓で緊急手術の適応となった.肺動脈内の血栓の除去に洗浄式自己血回収装置につないだ20Frのソラシックカテーテルを使用し,良好な結果を得た.このカテーテルの利点は,1)カテーテルの硬度が適当である,2)先端の形状が丸く愛護的である,3)小さいものや砕ける血栓は先端の穴から吸引し,ある程度の硬度の血栓はその形状を維持したままで除去できる,4)カテーテルの弯曲を変更でき,末梢の肺動脈を探りやすい,などがあげられる.しかし,粗暴な動作では肺動脈壁を損傷する危険性があるのでその操作に関しては注意が必要である.
  • 衣笠 誠二, 磯部 文隆, 岩田 圭司, 村上 忠弘, 野村 幸哉, 斉藤 素子, 秦 雅寿, 元木 学
    2005 年 34 巻 2 号 p. 111-115
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性,2000年9月大動脈弁狭窄兼閉鎖不全症に対しFreestyle弁のサブコロナリー法による大動脈弁置換術を施行した.12月ころから微熱,炎症所見の上昇を認めていたが,12月16日心筋梗塞を発症,以後2回の心筋梗塞を発症した.経食道心臓超音波検査でFreestyle弁に異常所見を認めなかったが,血液培養検査でメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRCNS)を認め,人工弁感染性心内膜炎の診断にて2001年4月3日緊急手術を行った.Freestyle弁には疣贅の付着なく,一見異常所見を認めなかったが,摘出すると右冠尖と無冠尖交連部に相当する部位のFreestyle弁と大動脈内膜接合面に膿の付着を認めた.機械弁による再弁置換術を施行,摘出標本からMRCNSが検出され,感受性のある抗生剤を8週間投与した.術後,多発性脳梗塞の合併を認めたが,発熱なく,炎症所見は正常化,術後113日目に脳梗塞後遺症なく退院,術後12ヵ月の時点で感染の徴候は認めなかった.
  • 井上 天宏, 坂本 吉正, 奥山 浩, 花井 信, 川田 典靖, 篠原 玄, 橋本 和弘
    2005 年 34 巻 2 号 p. 116-119
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    妊娠後期に急性大動脈解離を発症し,緊急帝王切開2日後にBentall手術を行い救命しえたMarfan症候群の1例を経験した.症例は24歳女性,妊娠31週,これまでの妊娠期間中にとくに異常を認めなかったが,突然の胸背部痛にて当院救急受診となった.高身長,クモ状指,リストサイン陽性,視力障害および側弯症を認め,Marfan症候群と診断した.造影CT検査および心エコー検査で大動脈弁輪拡張症を伴うStanford A型急性大動脈解離の発症を認めた.これ以上の妊娠継続は不可能であると判断し,緊急帝王切開術を施行,1,706gの男児を娩出した.造影CTで偽腔灌流を認め,早期血栓閉塞が期待できなかったこと,また大動脈弁閉鎖不全症にて急性心不全を起こしかねないことより,可及的早期の心血管修復が必要であると考えられた.しかし,ヘパリン投与による帝王切開後の子宮・胎盤剥離面からの大量出血を危惧し,二期的手術の方針とした.帝王切開2日後にBentall手術を行い,術中・術後に子宮・胎盤剥離面からの出血に悩まされることもなく,母子ともに良好な結果を得た.
  • 内田 智夫, 宮木 靖子
    2005 年 34 巻 2 号 p. 120-123
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,女性.2003年2月,心不全症状のため当院内科に入院し,利尿剤,強心剤などにより軽快退院した.その後,外来で経過観察していたが,6月になって右下肢の腫脹が出現した.深部静脈血栓症を疑って下肢のカラードプラ検査を施行したところ,深部静脈内に拍動性の血流を認め,同時に最大径約5cmの右総腸骨動脈瘤が発見された.血管造影検査では右総腸骨動脈瘤が造影されるとすぐに右腸骨静脈と下大静脈が造影され,腸骨動静脈瘻を合併した腸骨動脈瘤と診断した.6月24日,手術施行.あらかじめ右大腿静脈よりオクルージョンカテーテルを挿入し,瘻孔部位でバルーンを拡張してから動脈瘤を開放することにより,出血は少量で人工血管置換(Hemashield 8mm)が可能であった.術後,右下肢の腫脹は軽減し,心肥大も改善した.
  • 鈴木 仁之, 金光 真治, 徳井 俊也, 金森 由朗, 木下 肇彦
    2005 年 34 巻 2 号 p. 124-126
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,男性.昭和53年III度房室ブロックに対して左鎖骨下よりDDDペースメーカー(PM)植え込み術を施行した.植え込み術後24年にgenerator周囲に発赤と潰瘍を形成した.局所治療により軽快しなかったためにgeneratorを抜去し,使われていたリードは大胸筋内に留置し,右鎖骨下より新たにPMを植え込んだ.しかし,術後1ヵ月後に新たなPM周囲に発赤と潰瘍を形成した.全経過を通じて培養は陰性であったためになんらかのアレルギーによる皮膚潰瘍を疑い,各種パッチテストの結果,シリコンアレルギーが疑われた.そこで新たに植え込んだリードを抜去し,ポリウレタン製のPMをリード挿入してPTFEシートで被覆したgeneratorを植え込んだ.その後は皮膚症状の再発は認めていない.
  • Minimally Invasive Right Retroperitoneal Approach
    Shigeyoshi Gon, Takao Imazeki, Hiroshi Kiyama, Yoshihito Irie, Noriyuk ...
    2005 年 34 巻 2 号 p. 127-129
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    A 24-year-old woman with an abdominal aortic aneurysm (AAA) caused by mucoid medial degeneration of the aortic wall in the absence of Marfan syndrome is reported. She required a Y-shaped graft replacement of the abdominal aorta through a minimal incision and recovered successfully.
  • 高橋 昌一, 菅野 恵, 櫻田 徹, 森島 重弘, 本多 正知, 今井 康晴
    2005 年 34 巻 2 号 p. 130-133
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性.1年半前から他院で腎不全のため維持血液透析が導入された.このとき,腹部大動脈瘤,両側腸骨動脈閉塞,左主幹部病変を含む冠動脈狭窄が認められたが,手術の危険性が高いと判断され様子観察下にあった.今回手術を希望し当院に入院したとき,重度の冠動脈狭窄に加えて腹部大動脈瘤の最大径が85mmと大きかったため同時手術が施行された.術後経過はおおむね良好であったが,不整脈に対する治療を要した.透析患者であっても同時手術は十分可能と考えられるが,その管理において,とくに心機能が低下している場合は不整脈に対する注意が必要である.
  • 坂井 修, 村山 祐一郎, 沼田 智, 合志 桂太郎, 中村 昭光
    2005 年 34 巻 2 号 p. 134-136
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,女性.嚥下困難を自覚し近医を受診した.上部消化管内視鏡検査で,中部食道が左背側から壁外性病変により拍動性に圧排され狭窄という所見であり,胸部大動脈瘤による食道圧排が疑われ当院紹介された.入院後精査で,下行大動脈蛇行による食道圧排・狭窄が原因の嚥下困難(dysphagia aortica)と診断した.嚥下困難という明らかな自覚症状が存在していたということに加え,非瘤化性の大動脈病変であっても,食道壁がこのまま動脈圧で圧排を受け続けることにより,いずれ食道潰瘍や大動脈-食道瘻を形成する危険性があると判断し,蛇行部大動脈の切除・人工血管置換術を施行,自覚症状の改善を得た.
  • 福田 幸人, 三浦 純男, 木川 幾太郎, 宮入 剛
    2005 年 34 巻 2 号 p. 137-139
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    ヘパリンナトリウムの持続点滴により,AST,ALTの上昇を認めた症例にヘパリンを使用した心臓手術を行ったので,術後AST,ALTの変動について報告する.症例は59歳,男性.左内頸動脈狭窄と右脳梗塞の既往があるため,術前抗血小板薬などの中止とともにヘパリンの持続点滴を開始,この後AST,ALTの上昇を認めたが,ヘパリンの中止とともに正常値に復した.症状が悪化するためヘパリンを使用し拍動下に3枝バイパスを行った.術後呼吸,循環動態は安定し,AST,ALTも通常の手術と同様な傾向をとり,とくに異常な高値になることはなく経過した.ヘパリンによるAST,ALTの上昇の原因は不明であるが,術後に上昇しなかったのは,一時的な高用量使用,プロタミンによる中和の関与などの可能性も考えられる.
  • 西田 洋文, 須藤 義夫, 浮田 英生, 中島 伸之
    2005 年 34 巻 2 号 p. 140-143
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.意識消失発作と労作時の呼吸苦を主訴に他院を受診した.胸部X線検査で右中肺野に異常陰影を認めたため当院へ精査目的で紹介受診した.胸部CT検査で右肺S6に径1.5×2.0cm大の腫瘍陰影を認めたため右肺癌を疑った.しかし,右房内腔にも径6.0cm大の腫瘍陰影を認め主症状の原因はこの右房腫瘍と考えた.超音波検査上右房腫瘍は右房内腔を完全に占拠し,可動性に乏しく,卵円窩からの発生と思われたがValsalva洞や三尖弁への付着は認めなかった.冠動脈造影検査で心房枝より腫瘍を栄養する不整な比較的太い血管を認めた.MRI検査T1強調画像では心筋と等信号の腫瘍で右房壁への浸潤は認めなかった.以上の所見から右房腫瘍は良性腫瘍,とくに粘液腫の可能性が大きいと考えた.安定した循環動態で肺切除術を行うには心臓腫瘍切除を先行することが必要と考え,体外循環下に右房腫瘍切除術を施行した.右房腫瘍は大きさ6.8×5.5×4.5cm大,病理組織学的には粘液腫であった.術前から臥床がちでADLが大幅に低下していたため理学療法を必要としたが,術後26日目に大きな合併症なく退院した.粘液腫切除後3ヵ月で当院呼吸器外科において胸腔鏡下右肺S6切除術+1群リンパ節郭清を施行した.病理学的診断は中分化型扁平上皮癌,Stage IAで,根治度完全切除であった.肺切除後半年経過するが粘液腫,肺癌とも再発,転移を認めない.
  • 桑田 俊之, 水口 一三, 亀田 陽一, 森 透
    2005 年 34 巻 2 号 p. 144-147
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.平成14年5月20日ころから胸部不快感を自覚していた.27日夜中より胸部不快感に加え呼吸困難も出現したため,救急受診された.来院時,血圧60mmHg台のショック状態であり,CPKの上昇(1,751IU/l)および心臓超音波検査にて4/4度の僧帽弁閉鎖不全を認めた.気管内挿管および大動脈内バルーンパンピング駆動下に冠状動脈造影(CAG)を施行し,回旋枝の完全閉塞を認めたため,手術準備を行いながら経皮的冠状動脈形成術(PCI)を行った.ひき続き胸骨正中切開,右側左房切開でアプローチ,僧帽弁は前外側乳頭筋が完全断裂しており,St. Jude Medical®弁(27mm)で僧帽弁置換術(後尖温存)を施行した.術後経過は良好で,術後27日目に退院となり,現在外来にて経過観察中である.乳頭筋断裂の中でも前外側乳頭筋断裂は発生が希であるが,左冠状動脈系の心筋梗塞が原因であることから術前にCAGを行い,できる限り早期の僧帽弁置換術の施行と必要に応じて術前PCIまたは同時冠状動脈バイパス術(CABG)を考慮すべきであると思われた.
  • 蓑原 靖一良, 常深 孝太郎
    2005 年 34 巻 2 号 p. 148-151
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    術中心停止となった破裂性腹部大動脈瘤の救命例を経験した.症例は4年前の冠動脈バイパス術(CABG)と7ヵ月前の胃全摘術の既往のある71歳男性で,破裂性腹部大動脈瘤に対し緊急手術を行った.開腹後心停止となり,左開胸心マッサージを開始した.胸腔内で用手的に大動脈を遮断し,腹部大動脈瘤を切開,瘤内から胸部下行大動脈へ閉塞用バルーンカテーテルを挿入し遮断後,腹部大動脈の剥離を行い,腎動脈下で遮断し直した.心停止から37分後に自己心拍が再開し,Y字人工血管で腎動脈下腹部大動脈を置換した.末梢吻合は両側とも大腿動脈で行った.下腸間膜動脈は再建しなかったが腸管に虚血所見を認めなかった.術後3日間の人工呼吸管理を必要としたが,心不全・腎不全は発症しなかった.神経学的異常は認めず,術後50日目に軽快退院された.開胸直接心マッサージ・胸腔内大動脈遮断・閉塞用バルーンカテーテルの使用が有効であった.
  • 青木 賢治, 小熊 文昭, 菅原 正明, 平原 浩幸
    2005 年 34 巻 2 号 p. 152-155
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性.全内臓逆位.鏡像的右胸心に対する手術は不慣れであり困難を覚えるが,注意深い観察と徹底した術前冠動脈造影所見の理解により,通常と同等の冠動脈バイパス術(CABG;4枝バイパス)を行うことができた.鏡像的右胸心に対するCABGは希であり報告した.
  • 齊藤 政仁, 入江 嘉仁, 汐口 壮一, 権 重好, 垣 伸明, 木山 宏, 今関 隆雄
    2005 年 34 巻 2 号 p. 156-158
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    Stanford A型急性大動脈解離に対しFreestyle生体弁(Medtronic, Inc., Minneapolis, MN)を用い大動脈基部再建術および上行大動脈置換術後3年で,上行大動脈基部に仮性動脈瘤を発症し,手術を要したMarfan症候群の1症例を経験した.症例は60歳,男性.57歳時,大動脈弁輪拡張症(annuloaortic ectasia: AAE)にStanford A型急性大動脈解離を合併した.Freestyle生体弁をfull root法で用いBentall変法にて大動脈基部再建術と上行大動脈置換術を施行した.外来経過観察中,胸部単純CTでFreestyle生体弁周囲に瘤状陰影を認め精査したところ,最大径78mmの仮性動脈瘤を認め手術となった.仮性動脈瘤の原因は左冠動脈ボタン状吻合部のfistulaとそのすぐ近傍のFreestyle生体弁動脈壁fistulaであった.それぞれを直接縫合閉鎖した.術後経過良好で第24病日に退院となった.
  • 菊地 慶太, 幕内 晴朗, 村上 浩, 鈴木 敬麿, 安藤 敬, 大野 真, 小野 裕國, 千葉 清, 遠藤 慎一
    2005 年 34 巻 2 号 p. 159-161
    発行日: 2005/03/15
    公開日: 2009/08/21
    ジャーナル フリー
    近年OPCABが盛んに行われ標準術式として受け入れられている.しかし,冠動脈が心筋や脂肪内に深く埋もれた症例では,冠動脈の剥離が危険であることから,やむを得ず末梢側への吻合で妥協したり,体外循環を使用する従来のCABG (conventional CABG: C-CABG)へ移行せざるを得ない場合もある.今回われわれは,超音波双方向血流計を用い,埋没冠動脈の検索と剥離露出を安全に行う方法を開発した.本法はOPCABの可能性と適応をさらに広げるものであるとともに,C-CABGにおいても大動脈遮断前に冠動脈の位置を確認することでより良い吻合部位を探すことが可能である.
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