抄録
症例は73歳,女性.2003年7月,大動脈弁狭窄症(左室-大動脈圧較差:70mmHg),上行大動脈瘤(最大径50mm),心房細動,閉塞性動脈硬化症と診断された.9月18日大動脈弁置換,上行大動脈形成,PV isolationを予定したが,人工心肺開始後にA型大動脈解離を生じた.ただちに超低体温循環停止とし,送血管挿入部を含む上行大動脈人工血管置換,大動脈弁置換(CEP 19mm),PV isolationを行った.大動脈弁は二尖弁で,術中ビデオで確認すると心筋保護カニュラ挿入部位からの解離であった.術後CTでは偽腔は血栓閉塞しており,第28病日に軽快退院した.大動脈弁二尖弁は上行大動脈瘤や解離を合併することが多く,手術手技について細心の注意が必要である.また,術中大動脈解離はきわめて希な合併症であるが,発生した場合迅速な処置が必要である.