2006 年 35 巻 3 号 p. 147-150
上行弓部全人工血管置換術後の縦隔洞炎を2例経験した.症例1は急性大動脈解離で上行弓部全置換術を施行し,術後12日目に感染性心嚢液貯留を認め再開胸した.術中迅速検鏡により人工血管感染は否定的であったため,一期的に洗浄,大網充填し閉胸した.症例2は胸部大動脈瘤・腹部大動脈瘤に対し,二期的に人工血管置換術を施行した.術後73日目に胸部正中創からの浸出液にて発症した.再開胸すると心嚢閉鎖用Gore-Tex sheetの表面全体に膿汁を認め,人工血管にも感染が及んでおり,開胸のまま6日間洗浄し菌培養陰性化をしてから大胸筋充填し閉胸した.胸部大動脈人工血管置換術後の縦隔洞炎は難治性で死亡率の高い合併症であり治療方針決定は困難であるが,人工血管感染が疑われない場合は一期的な閉胸,疑われる場合は洗浄して減菌を試みたのち,二期的な閉胸が望ましいと考えられる.