日本心臓血管外科学会雑誌
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左室心筋緻密化障害を伴う大動脈弁・僧帽弁閉鎖不全症成人例に対する二弁置換術の経験
園田 拓道城尾 邦彦梅末 正芳松崎 浩史松井 完治
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2006 年 35 巻 3 号 p. 168-172

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抄録

左室心筋緻密化障害は,胎生期において左室心筋の緻密化の過程が障害されて起こる先天性心筋症の一つであり,心不全発症後の予後は不良である.本症は新生児・乳児期の重症心不全の原因として知られてきたが,最近成人期に発見される例が散見されるようになった.しかし,本疾患を合併した弁膜症患者に開心術を行った文献的報告はなされていない.今回われわれは,左室心筋緻密化障害を伴う重度の連合弁膜症症例に対し,二弁置換術を施行したので報告する.症例は62歳,男性.左室心筋緻密化障害およびIV度の大動脈弁・僧帽弁閉鎖不全症により心不全を発症し入院した.保存的治療により可及的に心不全をコントロールしたのち機械弁による大動脈弁・僧帽弁置換術を施行した.術後急性期の経過は良好で心機能の著明な改善を認め,術後34日目に退院した.今後は左室心筋緻密化障害による慢性期の心機能低下について慎重な経過観察が必要である.

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