2007 年 36 巻 3 号 p. 170-173
症例は63歳,男性.上行大動脈の軽度拡大を認めた大動脈弁狭窄症(AS)に対し大動脈弁置換術(AVR)を施行した2年4ヵ月後,急性A型大動脈解離を発症した.Bentall手技および上行弓部大動脈置換術を施行し救命した.上行大動脈の拡大を認める大動脈弁膜症に対する手術術式にはいまだ議論の余地があるが,バルサルバ洞が径50mm以上の拡大を示す場合には,Bentall手技を検討してもよいのではないかと考える.AVR後は定期的にUCG検査を行い,上行大動脈,バルサルバ洞の拡大の進行を認めた時点で,待機的にBentall手技による再手術を行うべきであった.