理学療法学Supplement
Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: 609
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内部障害系理学療法
開腹手術施術患者への理学療法士のかかわりについて
―早期退院を目指して―
*矢古宇 清乃
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抄録
【はじめに】
開腹術後早期の歩行再獲得は廃用予防、消化管の蠕動運動促進、早期退院へ向けて非常に重要である。当院では、早期離床を目指し開腹手術を施行する患者に対して理学療法を施行している。今回、開腹手術後理学療法を施行した患者の術前理学療法実施日数、術後初歩行までの日数、退院までの日数を調査し、理学療法の効果を考察したのでここに報告する。

【方法】
対象は2004年9月~10月の2ヵ月間に術後理学療法の指示が出た患者のうち病前ADLが自立していた35名(男性24名、女性11名)とした。平均年齢は63.0歳であった。
方法は対象患者に対して、緊急手術・指示が術後となった場合を除き、術前に理学療法の目的・内容・課題達成までの目標日数(初歩行:1病日、理学療法室来室:7病日以内、退院:14~21病日)についてリーフレットを用いて説明し、呼吸練習・起き上がり練習、術後に行う簡単な運動を施行した。術後は医師の指示に従い手術翌日から運動療法、歩行練習を行った。その後、術前理学療法実施日数、術後初歩行までの日数、理学療法室来室までの日数、退院までの日数を調査し、歩行の再獲得における理学療法の効果を判定・考察した。

【結果】
全35名中、術前非実施(非実施群)が9名(26%)、1日以上実施(実施群)が26名(74%)であった。初歩行について全体の平均は1.3病日であった。非実施群は全員1病日に歩行を開始できた。実施群では6名が初歩行に2病日以上を要した。初歩行が遅れた理由は2名が医師の指示、他は全身状態不安定であった。初歩行後、非実施群2名が本人の希望により理学療法を中止し、7名が術後7日以内に調査期間を終了してしまった為、理学療法室に来室できたのは26名であった。理学療法室来室平均日数は7.2日、非実施群の平均は5.3日、実施群は7.4日であり有意に実施群の方が長い期間を要した。退院までの日数について、調査期間中に退院できたのは20名、退院できなかったもののうち13名は術後21日以内であった。全体の平均は19.5日であり、非実施群は19.0日、実施群は19.3日が平均で有意差はなかった。

【考察】
今回、開腹術後の患者に対し早期離床を目的に理学療法を施行した。術前に理学療法を開始することで術後の起きあがりから歩行までの一連の基本動作を円滑に行うことが出来、廃用を予防して早期退院が可能と考えたが、今回の調査では理学療法施行の有無による大きな違いは認められなかった。これは理学療法室来室には本人のmotivationが、退院は外科的・家庭環境的な問題が大きく関与している為と考えられる。しかし、実施群は退院までの間に本人の希望により中止になった例はなかった事で理学療法を行なう動機付けができたと考えられた。また全体の97%が1病日目に歩行を開始し、退院までの平均日数が目標退院日数以内となった事で早期離床に理学療法が一定の効果をあげたと考えられた。
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© 2005 日本理学療法士協会
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