日本心臓血管外科学会雑誌
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右肺静脈移植と心房内血流転換を行ったscimitar症候群の1例
宇野 吉雅鈴木 孝明保土田 健太郎石田 治福田 豊紀
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2007 年 36 巻 5 号 p. 305-308

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抄録

症例は16歳,男性.生来自覚症状,異常所見を認めなかったが,7歳肺炎罹患時に胸部単純写真で右肺の異常陰影を指摘された.その後の精査でscimitar症候群と診断されたが,経過観察となっていた.今回15歳時の心臓カテーテル検査で,肺体血流比の上昇を認めたため手術施行となった.手術は,上行大動脈送血,上大静脈+大腿静脈2本脱血の体外循環,心停止下に右肺静脈移植と右房内血流転換を行った.本症例では心房中隔欠損がなく,右肺静脈は横隔膜位で下大静脈に開口しているうえに左房とは距離が離れていたため,これを右房側壁に移植したのち,新たに作製した心房間交通を介して肺静脈血が左房に還流するよう右房内baffleにより血流転換を行った.術後経過は良好で,心エコー上もスムースなbaffle内血流が確認された.なお,右肺静脈移植の手術操作に際して,吸引補助脱血を併用することにより下大静脈の遮断を必要とせず良好な無血視野が得られた.

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