日本心臓血管外科学会雑誌
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下行大動脈内浮遊性尾状索状血栓
松木 克雄藤原 英記小田 克彦
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2007 年 36 巻 5 号 p. 301-304

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抄録

下行大動脈内に浮遊するmassが血栓塞栓症の原因となることは希である.今回われわれが経験した症例は,43歳女性で,これまでとくに血栓塞栓症の既往はみられなかったが,初めに右腎梗塞を発症し,続けて脾梗塞を生じたため当院に入院となった.経食道心エコー検査(TEE)を行ったところ,下行大動脈内に浮遊性の尾状索状のmassを認め,造影CTでも,動脈管索付近に付着部を有し下行大動脈に広がるmassがみられた.腎梗塞・脾梗塞はmassから血栓が飛散し血栓塞栓症を起こしたものと考え,まず抗凝固療法を行ったのちに,外科的にmass(血栓)を除去した.術後の入院中に血栓塞栓症の再発はみられず,経過は良好であった.大動脈内に浮遊性血栓がみられた場合には,抗凝固療法を先行して行い,重篤な合併症をひき起こす前に,除去することが重要である.

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