日本災害医学会雑誌
Online ISSN : 2434-4214
Print ISSN : 2189-4035
総説
何がトリアージと考えられてきたのか—わが国の学術研究におけるトリアージの用法についてのスコーピングレビュー—
島田 裕平三羽 恵梨子坂井 愛理石橋 真帆平澤 暢史南谷 健太冨尾 淳
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2025 年 30 巻 2 号 p. 72-81

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抄録

【目的】国内学術研究におけるトリアージの用法を整理する。【方法】多領域の和文学術文献におけるトリアージの用法についてスコーピングレビューを実施した。対象文献の発行年は1990年から2023年とした。【結果】438件の文献がレビュー対象となった。トリアージの用法は「対象(者)の優先順位付け」という核を共有しつつも多義的であり、少なくとも7つの要素を含み得ることがわかった。医学系領域では、災害と救急の間では「死亡群」を含むか否かという大きな差異がみられたものの、分野ごとに具体的な局面を想定して議論する傾向があるために、トリアージの意味や文脈が安定していた。非医学系領域では、同じ分野でも文献ごとに異なるトリアージの局面が取り上げられており、各論者が各局面のトリアージを議論する結果、複数のトリアージ理解が併存する状況がみられた。【結語】用法の差異を踏まえたうえで、トリアージの学際的議論が交わされることが期待される。

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