抄録
アミノ酸誘導体と2-Hydroxyethyl methacrylate(HEMA)の水溶液を歯質被着面処理材として用い, 歯質と市販ボンディング材との接着が強化されることとその機構については既に報告した.今回, この方法で被着面処理した牛歯象牙質にアミノ酸誘導体〔N, O-dimethacryloyl tyrosine(DMTY)〕を含む試作ボンディング材を介して, 市販コンポジットレジンを接着したところ170kg/cm2(エナメル質に対しては135kgf/cm2)の引張接着強さが得られたので報告した.これはN-methacryloyl alanine(MAL)-HEMA水溶液が優れた被着面処理効果を持つこと, DMTYボンディング層の強度が大きいこと, 処理面との親和性がよいこと等によるものと考えられた.また, 被着面処理材による牛歯象牙質からのCa, Pの溶出量を測定した結果, アミノ酸誘導体を含む被着面処理材による象牙質からのハイドロキシアパタイトの溶出量は極めて少ないことが推測された.