歯科材料・器械
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原著
チタンの熱処理による酸素固溶硬化
亘理 文夫西村 文夫
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1991 年 10 巻 2 号 p. 266-274

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抄録
酸素による固溶硬化を図ることを目的に, 温度300〜1, 200℃, 大気中, 真空中, 低酸素分圧の各雰囲気でチタンの熱処理を行なった.800〜900℃付近まで酸化被膜は比較的安定であるが, より高温では酸化現象に変化が現われる.通常の低温側における1段熱処理では真空中でも酸化膜の形成が認められる.高温側に一旦, 昇温して表面酸化膜を金属内に固溶吸収した後, 低温側で酸化熱処理を行なう2段熱処理では金属光沢を保持しながら, より多量の酸素を固溶させることができた.さらに均一化焼鈍を行なうことにより, 酸化熱処理で形成された酸化膜が金属内に固溶消失し, 再び, 金属光沢を呈するようになった.この時, 表面から深さ方向にビッカース硬さを測定することによって酸素の固溶拡散した範囲を硬化層厚さの増大として確認することができた.実測された硬化層厚さの値は, チタン中の酸素の拡散の活性化エネルギーから予想される値と定量的に良い一致を示した.チタンの硬度は最高500のものまで得られた.酸化被膜が形成されるか, 金属光沢を有したまま内部へ固溶拡散するかは, 酸素ガスの表面との反応と, 酸化膜から金属内へ酸素が再固溶する速度との兼ね合いに依存し, 強固な酸化膜の存在下では, 酸素の金属内部への拡散が妨げられるとするモデルで, 以上の現象を良く説明することができた.
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© 1991 一般社団法人 日本歯科理工学会
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