抄録
ハイドロキシアパタイト(HAp)の焼成時間を変化させた場合のMn2+のESRシグナル強度変化および結晶構造の変化について検討した.
アパタイトの焼結に要する時間は, 焼結温度の上昇に伴って短くなり, 焼成温度が1, 200℃の場合には, 数十分で焼結が終了した.しかし, 焼結助剤としてリン酸リチウムを添加したアパタイトの場合には, アパタイト単味に比べて約200℃低い温度で焼結が始まった.さらにリン酸リチウムの存在は, アパタイトを高温度で長時間焼成した場合, アパタイトの分解を促進し, 多量のβ-TCPを発現させた.このβ-TCPの存在下では, Mn2+のESRシグナルが発現しなくなることが明らかになった.また, 電子スピン共鳴法では, アパタイトのβ-TCPへの分解過程も追跡できる可能性が示唆された.