歯科材料・器械
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12 巻, 1 号
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原著
  • 第3報 重合開始剤量が収縮応力におよぼす影響
    根本 君也, 小松 光一, 堀江 港三, ラファエル ボウエン, 谷岡 泰弘, 池見 宅司, 並木 勇次
    1993 年12 巻1 号 p. 1-7
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    重合開始剤量を0.25〜1.0%まで変化させたジメタクリレート, および不定形シリカとMFの混合フィラーを60%混入した試作レジンについて調べた結果次のことがわかった.
    両端にアルミブロックを設けた溝中で測定した試作レジンの線収縮は, 重合開始剤量の増加と共に大きくなったが, その傾斜はフィラーを混入しないレジンの方が大きかった.
    上部が開放されている窩洞中での硬化時の収縮応力は, 重合開始剤量に対して対数的に増加し, コンポジットレジンの収縮応力はフィラーを混入しないレジンの約2.6倍で, 両者は比例した.
    重合硬化後の試験体表面の形状は, 重合開始剤量が増加するとフィラーを混入しないレジンでは放物線から方形に変化し, 元の平面と曲線との体積が全体の約8%であり, コンポジットレジンでは放物線が浅くなる傾向になって収縮量が減少した.
  • 都尾 元宣, 山内 六男, 長澤 亨, 後藤 隆泰
    1993 年12 巻1 号 p. 8-16
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    歯冠修復用レジンのX線不透過性は適合性の診査や2次う蝕の診査に必要な所要性質と考えられる.本研究では, まず現在市販されている主な硬質レジン, インレー用レジン, 暫間被覆冠用レジンなどの歯冠修復用レジンのX線不透過性を測定した.その結果, インレー用レジンにのみ良好なX線不透過性が認められた.そこで, これらについて定性分析による含有元素の固定, および粉末X線回折による化合物の同定を行い, X線不透過性向上因子について検討を行った.
    全てのインレー用レジンのフィラーにはシリカ系ガラスあるいは結晶が含まれていた.2製品からシリカ系ガラス中にBaイオンが, 他の2製品からZrSiO4が, 1製品からYbFが同定され, これらの元素および物質がX線不透過性に関与していると考えられた.また, X線不透過性はZrSiO4を含むものが最も高く, 次いでYbFを含む製品, Baイオンを含むシリカ系ガラスの順であった.
    本研究の結果, X線不透過性にはフィラー含有量よりはフィラーを構成する元素とその化合物の種類が大きく関与しており, 特にZr化合物がX線不透過性を向上させるには有効と考えられる.
  • –印象材の冷却収縮による影響と印象厚さとの関係について–
    平口 久子, 川本 晃也, 長崎 信司, 中川 久美, 土生 博義
    1993 年12 巻1 号 p. 17-28
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    4種類のラバー系印象材(親水性付加型シリコーン印象材, 付加型シリコーン印象材, 縮合型シリコーン印象材, ポリサルファイド印象材)を使用し, 印象硬化時温度(23℃, 32℃), 印象厚さ(1.0, 2.5, 5.0, 7.5 mm)の相違による, 円柱型模型の再現性を三次元座標測定装置を使用して測定した.
    その結果以下の結論を得た.模型の寸法精度は, すべての印象材で, 印象硬化時温度と印象厚さの影響を受けた.印象材の冷却収縮による模型の直径の寸法変化は, 印象厚さの増加に伴って増加し, 印象厚さ1 mmについて約10〜12 μmであった.
  • 1. 試作コンポジットレジンの加速劣化試験
    川口 稔, 福島 忠男, 宮崎 光治
    1993 年12 巻1 号 p. 29-33
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    歯科用コンポジットレジンの機械的性質の低下におよぼす構成相の劣化の影響を検討するために, 試作BisGMA系コンポジットレジンについて4種類の加速劣化試験を行った.試作コンポジットレジンは不定形石英フィラーと球状シリカフィラーを55vol%配合して調製した.フィラーとレジンマトリックス界面相の劣化による影響を調べるため, サーマルサイクリング(最高10万回)と37℃および60℃の水中浸漬(最長180日間)を行った.また, マトリックスレジンの劣化は, 37℃の75%エタノール中に浸漬した(最長180日間)コンポジットレジンについて評価した.試作コンポジットレジンはサーマルサイクリングの回数および各種浸漬液中への浸漬時間の増加に伴い, 劣化程度が大きくなった.本研究の結果から, 界面相およびレジンマトリックス相の劣化は, コンポジットレジンの耐久性に大きな影響をおよぼすことが明らかとなった.
  • -HEMA水溶液による酸処理象牙質の被着面処理について-
    鈴木 一臣, 中井 宏之
    1993 年12 巻1 号 p. 34-44
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    歯質と修復用レジンの接着性の改良を目的に, 象牙質の表面処理効果と作用機序について検討した.コラーゲンおよび酸処理象牙質を2-Hydroxyethyl methacrylate (HEMA) 水溶液によって表面処理を行い, FT-IR分析, SEM観察および接着試験の結果から次のような結果を得た.即ち, コラーゲン線維へHEMAが吸着するためには水が必要である.コラーゲンの処理に用いた処理液のHEMA濃度とHEMA吸着量の関係においてHEMAが6〜60%の範囲でコラーゲンにHEMAがもっとも多く吸着した.HEMAの吸着したコラーゲンは, 形態変化 (SEM写真) から推定して硬直化していた.接着強さは, リン酸-30%HEMA水溶液処理12.07MPa, クエン酸-30%HEMA処理10.09MPaおよびEDTA-30%HEMA処理7.04MPaであった.
  • (第1報) 寸法変化と強さに及ぼすほう酸添加の影響
    今 政幸, 桑山 則彦
    1993 年12 巻1 号 p. 45-50
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    耐火模型材として高温で焼成しても原形(粉末成形体)と寸法差の生じない強度の高い焼成体を得ることを目的とした.酸化亜鉛-アルミナ2成分系配合物に添加材としてほう酸を添加した複合体の焼成による寸法変化および焼成体の機械的性質などを基礎的に検討した.
    その結果, 酸化亜鉛とアルミナの複合体は高温で反応し, ガーナイトを生成するため, 体積が増加した.等モル比の配合物が最も反応膨張し, 粉末の処理法によっても異なるが約10%線膨張した.等モル比の配合物にほう酸を添加した場合は少量の添加でも焼結し, 急激に膨張率が小さくなる傾向を示すが, 7wt%添加までは1, 300℃の焼成でも収縮しないことがわかった.この原寸より小さくならない焼成体は気孔率46%で, 約40MPaの曲げ強さを得ることができた.
  • 第4報 メタルコア鋳接と培養細胞の形態変化
    横山 有紀, 田島 清司, 深水 康寛, 柿川 宏, 村上 要, 内山 長司, 小園 凱夫
    1993 年12 巻1 号 p. 51-58
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    生体への安全性から, 著者らは純TiおよびTi-6Al-4V合金の既製ポストとしての適応性を検討しており, 第1報では機械的性質においてTi-6Al-4V合金がNi-Cr合金, 18-8ステンレス鋼ならびに純Tiよりも優れた金属材料であることを明らかにした.続く第2, 第3報では, 短期ならびに長期浸漬での成分金属の溶出挙動, またこれらが培養細胞に及ぼす影響を調べた.その結果, 純Tiでは1ヵ月の長期でもTiの溶出はみられず, Ti-6Al-4V合金ポストでは, Ag合金コアを鋳接するとAlの溶出がわずかに増加したが, ポスト成分による細胞増殖への影響は認められなかった.
    本報では, メタルコア鋳接の影響をさらに検討するために, コア材としてAg合金の他にAu-Ag-Pd合金も用い, ポストにこれらを鋳接したポストコアの細胞形態への影響を調べた.メタルコアを鋳接すると著しい細胞への障害が認められたが, これは純TiおよびTi-6Al-4V合金ポストからではなく, メタルコアからの成分金属の溶出に基因するものであった.Ag合金コアを鋳接した場合は, コアから溶出したAg, Znが主として細胞質に毒性を示していたが, Au-Ag-Pd合金コアではAg, Znに多量のCuの溶出も加わるために, 細胞質のみではなく, 核質にまで強い毒性を示した.
  • (第1報) 焼成温度の影響
    足立 正徳, 土井 豊, 後藤 隆泰, 若松 宣一, 亀水 秀男, 金 昇孝, 森脇 豊
    1993 年12 巻1 号 p. 59-67
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    電子スピン共鳴法(ESR)を利用して, アパタイト合成時に不純物として含まれる極微量のMn2+を指標にすることで, ハイドロキシアパタイト(HAp)の焼結機構を検討した.
    Mn2+のESRシグナルは, HApの場合には950℃, リン酸リチウム(Li3PO4)を添加したHAp(Li-HAp)の場合には750℃から発現し, 焼成温度の増加に伴って直線的に増加した.このMn2+のESRシグナルの発現は, Mn2+が加熱により球対称場に近い環境に拡散あるいは再配列したためであり, HApを構成する他のイオンも同様な現象が起きていることを示唆するものであった.この焼結挙動は, 従来の熱分析法(TMA)で測定される結果とも一致した.
    このESR測定では, イオンの挙動を直接的に追跡することで, アパタイトの焼結機構を解明できる可能性が示された.
  • (第2報) 焼成時間の影響
    足立 正徳, 土井 豊, 後藤 隆泰, 若松 宣一, 亀水 秀男, 金 昇孝, 森脇 豊
    1993 年12 巻1 号 p. 68-73
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    ハイドロキシアパタイト(HAp)の焼成時間を変化させた場合のMn2+のESRシグナル強度変化および結晶構造の変化について検討した.
    アパタイトの焼結に要する時間は, 焼結温度の上昇に伴って短くなり, 焼成温度が1, 200℃の場合には, 数十分で焼結が終了した.しかし, 焼結助剤としてリン酸リチウムを添加したアパタイトの場合には, アパタイト単味に比べて約200℃低い温度で焼結が始まった.さらにリン酸リチウムの存在は, アパタイトを高温度で長時間焼成した場合, アパタイトの分解を促進し, 多量のβ-TCPを発現させた.このβ-TCPの存在下では, Mn2+のESRシグナルが発現しなくなることが明らかになった.また, 電子スピン共鳴法では, アパタイトのβ-TCPへの分解過程も追跡できる可能性が示唆された.
  • 川井 隆夫, 松下 富春, 寺延 治, 島田 桂吉
    1993 年12 巻1 号 p. 74-83
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    Ca/P比の異なる3種のヒドロキシアパタイト粉末を焼結して得た, HAPとαTCPもしくはCaOの2相混合セラミックスの界面反応挙動について, 無機電解質のほかに牛血清を含んだ液を用いて調査した.
    溶液のCaイオンが未飽和の場合, αTCP含有量の少ない試料およびCaOの含まれる試料は溶解挙動を示したが, CaおよびPイオンが飽和の場合, 試料表面にHAP微粒子が析出した.しかし, αTCPの多い試料は牛血清の添加により溶解が加速され, CaやP濃度には影響されなかった.
    このことから, カルシウムリン酸塩セラミックスをin vitroで評価するさいに血清成分の影響を考慮する必要がある.また, この挙動はin vivoの結果と対応することから, 初期のより良好な骨安定固着を維持するためにはαTCP含有量を少なくすることが重要であると考えられた.
  • I. ビッカース硬さへの効果
    亘理 文夫, 中村 英雄
    1993 年12 巻1 号 p. 84-92
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    歯科用チタン製品を強化する方法としてガス分圧をコントロールした雰囲気中で熱処理(500〜1, 200℃, 10-5〜760torr O2, N2, C6H6および真空)を行い, 表面から侵入型合金元素を拡散させ, 固溶硬化を図ることを試みた.酸素, 窒素, 炭素の各侵入型合金元素について, 固溶後のビッカース硬さを測定し, 効果を比較した.試料断面の硬さ分布は表面硬化層と内部均一硬さ層から成り, 前者の厚さは拡散活性化エネルギーから計算される予想値とよく一致した.熱処理に伴う表面生成物をX線回折で調べた.各侵入型合金元素の反応性, 拡散度, 固溶の難易度, 強化能について特性を比較した.窒素は酸素に比べ反応性については不活性であるが固溶効果は類似しているのに対し, 炭素は固溶度が小さく容易に炭化膜を形成し, また強化度も高くない点で固溶効果特性が異なっている.
  • 坂村 昭彦
    1993 年12 巻1 号 p. 93-103
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    象牙質接着において殺菌は今後重要な1つの側面になりつつあると考えられる.グルタルアルデヒド(GA)は医療器材や道具用のウイルスの殺菌剤として臨床的に使用されている.またGAは, GLUMAプライマーの1成分として象牙質接着にも現在利用されている.本研究では, グルタルアルデヒドを殺菌剤として象牙質接着に積極的に利用するため, プライマーおよびエッチング剤へのGAの添加の影響について検討した.GAを2-ヒドロキシエチルメタクリレート水溶液プライマーに添加すると, EDTAやリン酸などの前処理剤の種類や重合開始剤の種類を問わず, 象牙質とレジンの接着強さの向上に顕著な効果があった.
    走査型電子顕微鏡や赤外線吸収スペクトルによる象牙質表面の研究の結果, GAを添加してもリン酸水溶液の象牙質エッチング作用には影響がないことが解った.またそのことにより象牙質接着がマイナスの影響を受けることはなく, むしろ接着強さの向上にややプラスの効果があった.GAを添加した10%リン酸水溶液は, エナメル質と象牙質を同時にエッチングし得る, 殺菌性を有する, トータルエッチング液になり得る可能性が示唆された.
  • 平野 博英
    1993 年12 巻1 号 p. 104-116
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は床用裏装材としての新しいレジンの試作とその評価である.フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(2-6F)と10%のトリメチロールプロパントリメタクリレートを含むメチルメタクリレートからなる組成物を材料とした.この材料に光重合と化学重合の開始剤を添加しデュアルキュアー型とした.同じ2-6Fとモノマーの組成物からなる光重合型と化学重合型の裏装材および市販床用裏装材のリベロン, リベロンLC, トクソーリベースを用い, 理工学的性質, 適合性, 耐汚染性および細胞毒性について比較・検討を行った.今回試作したフッ素系デュアルキュアー型レジンは同じ組成の化学重合型のレジンよりも光重合型のレジンに近い性質を示した.市販裏装材との比較においては, 理工学的性質および適合性の点では同程度か, あるいはより優れた性質を示し, 耐汚染性および細胞毒性の低さの点では市販裏装材よりもかなり優れていた.従って, 試作したレジンは床用裏装材にふさわしい種々の性質を有していることが示唆され, 臨床応用が期待される.
  • 藤井 孝一, 有川 裕之, 蟹江 隆人, 寺尾 隆治, 鶴田 浩範, 糸永 昭仁, 門川 明彦, 濱野 徹, 井上 勝一郎
    1993 年12 巻1 号 p. 117-122
    発行日: 1993/01/25
    公開日: 2018/04/05
    ジャーナル フリー
    義歯床用軟性裏装材の動的粘弾性を明らかにするために, 3種類の軟性裏装材(アクリル系2種類, シリコーン系1種類)ならびに義歯床用材料(PMMA)について, 振動リード法による動的粘弾性測定装置を用いて, 貯蔵弾性率(E′)と損失弾性率(E″)の測定を行った.さらに, 義歯床用材料についても同様の測定を行った.
    アクリル系軟性裏装材2種類のE′とE″は, -20〜50℃の温度範囲で著しい低下を示した.しかしながらその後, E″だけは75〜80℃付近でブロードなピークを示した.これに対して, シリコーン系軟性裏装材のE′, E″の温度変化は2種類のアクリル系軟性裏装材のE′, E″の温度変化に比べて極めて小さいものとなった.これらの結果から, シリコーン系裏装材がアクリル系裏装材2種類に比べて, 熱的に安定した堅牢な材料であることが推測された.
    3種類の軟性裏装材を各々裏装した義歯床用材料のE′, E″の値(37℃)は, 裏装しない場合の約1/8程度であった.アクリル系裏装材2種類を各々裏装したものでは, -10℃付近でE″のピークが観察された.また, シリコーン系裏装材を裏装した場合のE″は, 測定温度範囲(-20〜90℃)内で温度上昇に伴って少しずつ減少する傾向がみられた.
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